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2008年2月 6日 (水)

冬の時計

Milk_2

ミルクを温めるのはむずかしい

青いガスの火にかけて

ほんのすこしのあいだ新聞を読んだり

考えごとをしていたりすると

たちまち吹きこぼれてしまう

そのときのぼくの狼狽と舌打ちには

いつも

「時間を見たぞ」

「時間に見られてしまったな」

という感覚がまざっている


ミルクがふくれるときの音って

実に気持ちがわるい

と思いながら急いでガスの栓をひねったときはもう遅い

時間は

ゆうゆうと吹きこぼれながら

バカという

ぼくも思わずかっとして

チクショウといい返す


今日の石鹸はいいにおいだった

なるほど

きのうのヒステリー

あしたの惨劇

みんな予定どおりというわけか

冬の時計が

もうじき夕方の六時を打つ



(北村太郎詩集『ピアノ線の夢』から、『冬の時計』)

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我が家は飲むのも、ミルクの代わりに料理に使うのも豆乳だけで、基

本的にはミルクの買い置きは存在しないから、昨日『抹茶ミルク』を

作るのにほんとに久しぶりにミルクを買って温めていたら、この詩が

浮かんだ、というわけなのだ。

親しんだ言葉というのはそんな風に、いつのまにか人の血となり肉と

なっていくものだと思う。

私はもしかしたら普通の人よりは多く言葉を遣って暮らしているかも

しれないけれど、日常の言葉だけでは駄目なのだ。ましてビジネスレ

ターみたいなのばっかり読んだり書いたりしていると、すっかり自分

の言葉が枯渇してきてしまう。非日常の言語に飢えてくる。

それって、しばらく野菜を食べていないと、身体が自然に野菜を欲す

るというのと全くおんなじだな、と思う。

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