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2007年8月25日 (土)

南の小さき島で

Hachijyoujima_2

東の沖から星たちが

まばたきをとざしはじめると

炎型(ひがた)をとどめる磯のはざまから

蒼い光芒がほのかに立ちのぼる


目ざめぎわの紫紺の海を背に

水けむりのように揺らめいたり

氷柱のごとき鮮やかなきらめきを放ち

日が射すと裡形の木偶(ひとかげ)になって

潮だまりにかげろう


はかない気をただよわせて

かげは日もすがら目目雑魚や蟹や

亀の手(せのかみ)や海星(ひとで)たちをいざない

遠い日の海をうたいつづける

草原や森にめでられた豊満な朝を

無垢で艶やかだった碧いうねりを


うた声は凪のみずもで潮騒とまじわり

嵐には海鳴りと和してとどろく

潮だまりのいきものたちも声にあわせて

唄い踊り海をにぎわし

失われた創生の血をよみがえらせる


 毒にまみれた碧い惑星の 南の小さき島で

 炎型の磯は いまなおけなげに原始をたもち

 目目雑魚や蟹や 亀の手や海星たちと

 たくましく碧い海を育んでいた


(平山昭一『南の小さき島で』/南海タイムスH19.8.10)

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聴いてないクラシックのCDを小さなダンボール箱ひとつ分と珈琲豆を

1袋、島にいるボスに送ったのは春のこと。そのお礼だと言って先日

故郷の青森からりんごジュースが送られてきた。片山りんご園という

のはボスの幼馴染で、もうずいぶん長いことずっと『暮らしの手帖』の

編集者をされている方がお持ちのりんご園だ。さっそくお礼を言って

いただいた。

片山りんご園のりんごは、バクタモンという天然素材の土壌改良剤を

使い、有機肥料を使って無袋で育てられ、樹上で完熟した実だけを

収穫して作られるそうだ。ビタミンC以外の添加物はいっさい加えて

いない100%ストレートのりんごジュース。りんごの品種はなんと10

種類以上あって、この箱には6種類のりんごジュースが6本入ってい

たのだけれど、見た目の色も違えば香りも、酸味と甘みのバランス

もそれぞれみんな違う。まるでりんごをそのまま齧っているようなフレ

ッシュな味。本物のりんごジュース、ってこういうものだったんだ、と

驚くような美味しさです。せっかくだから、ここに片山りんご園のホー

ムページをリンクしておこう。 → 片山りんご園

Appple_juice

そして、そんなことがあってしばらくしたらまたボスからメールがきた。

絵文字が踊ってる中に文面が埋もれているような、見ただけげんなり

するメール。何かというと「お前も物書きの端くれなら」なんて言う癖

に、物書きなら絵文字なんて使うな。いい歳をした男の人が老眼鏡を

かけて携帯で絵文字を打ってる姿なんて、想像しただけで忍びない。

用件はといえば、前に作った梅酢がいい色に熟成したから、手作り

の梅ジャムと一緒に送りたいが果たして食すか、というようなこと。な

んでも毎年田舎から梅が送られてきて、そのたびに作るのだそうだ。

無下にも断れないのでいただくことにしたら、先日、りんごジュースの

空き瓶に入った梅酢と、キムチの空き容器に入れられた梅ジャムが

送られてきた。こういうところが私の神経質でいけないところかもしれ

ないけれど、キムチが入ってたプラスチック容器なんて、いくら洗って

もキムチの匂いがするのに、なにゆえキムチの容器? なんて思って

息子にそう言ったら案の定、息子は「僕は食べないからね」なんて言

う。ともあれ、お礼をと思って電話をしたら、ボスは物書きの途中でで

もあったのか、やけに素っ気なく、味見をしたらまた電話ちょうだいと

すぐに切られた。インターネットで梅酢を使った料理など検索してみた

ものの、なんとなく気乗りがしないままそのままにしていたら、今度

は封書がきてしまった。「梅酢、ジャムのお味はいかがであったか

な」という一言に、先日島の新聞に掲載された詩が同封されていた。

もっと若い頃、新宿3丁目に事務所を構えていた頃は都会のクロコダ

イルダンディーみたいに元気だったボスも、いまや寄る年波で満身創

痍の体。あの頃は若い編集者に「家に遊びに来てくださいよ」なんて

言われても、「家庭の匂いなんかがするところに行きたくない」と言っ

て絶対に行かなかったのに、最近やたらと人の家に来たがるのは、

ボスも寂しくなったのかな。とはいえ、長年独りでやってきたから、今

さら人とうまくやることだってできないのだ。困ったものだ。

ちょうど娘が「そういえばボスの梅ジャムは?」と聞くので、朝焼いた

マフィンに塗って食べてみた。ボスの作った手作り梅ジャムはほろ酸

っぱい味。梅酢のほうは思いのほかまろやかで上品な味で、無糖の

炭酸水で割って飲んだらよさそうだ。残りの夏をクエン酸パワーで乗

り切ろう。

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