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2006年10月31日 (火)

ドラマが始まる空間 / cafe DADALLI

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陶芸をやらない私が今回、陶芸家の hashikbamig 氏のオフ会に(死

ぬほど)参加したいと思ったのは、hashibamig 氏の圧倒的な食のセ

ンスと、そういう方がプロデュースする盛りだくさんにして魅惑的な内

容と、自然のなかでの焼き物体験、というのが大きな理由だったの

だけれど、でもそのなかでも最も大きかったのが、このカフェ・ダダリ

だ。氏のいちばんのお気に入りとしてブログで何度となく紹介される

ここの画像を見るたびに、私はここに焦がれた。でもそれはかなわぬ

夢に思われた。『いつか行こう』という曖昧な言葉だけがいつも浮か

んでは消えた。それが行けることになったのだ。となったら行かない

手はあるまい? それでは、ラストは憧れのカフェ・ダダリ!

ダダリはこんなロケーションにある。

眼下は切り立った断崖絶壁の青い海。

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このエントランスからして、すでにドラマは始まっている ・・・

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でもこの日はあいにく駿河湾を一望する特等席にはすでに先客がい

た。ゆえに視線を端に移してわずかに切り取った風景。

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カフェ・ダダリには『長谷川美術館』という名前の通り、ガウディや

ウォーホール、イブ・クラインやリキテンシュタインといった個人所

蔵としては信じられないような作品が展示されているけれど、最も

アートなのはこの窓に切り取られた風景かもしれない。日々変幻

し、片時も同じことはない自然のアート。視界の中の motion blue.

自分の部屋にこんな窓があったら ・・・・・・

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そして別の窓から見た断崖の海。

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今日の空の青は今日しか見られない空の青なんだ。

そういうものがあることを、あなたにもわかってほしかった。

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見知らぬ私たちが大勢で来たせいだろうが、店の女性がちょっと神

経質になっていて思うように写真が撮れなかったせいもあるけれど、

実際にここへ来てわかったのは、私は hashibamig 氏の視点に恋し

ていたということなのだった。私は自分の記憶の中の風景と実際の

風景との間にわずかだけれどギャップを感じた。

カフェ・ダダリはたぶん、わざわざここを目指してくるようなところでは

なくて、日常的に思い立ったらふらっと立ち寄れるロケーションにあっ

てこそ良い場所なのだと思う。私にとっての『CAFE LES JEUX』みた

いに。自然をそのまま反映する建物だから、きっと来るたびに印象が

違う。そのいろいろな顔を知ってこそ、愛着が増すのだと思う。

けれど、恋人とドライブしていてたまたま偶然ここをみつけて立ち寄っ

たとしたなら、それはそれでまた格別なサプライズと共に忘れがたい

記憶として残るだろうな。「ねえ、またあそこに行ってみない?」と言

ったら、2人の間ではそれだけで通じるような。

ともあれ、実際にここに来たことで、ダダリは私の頭にもいろいろなも

のを残した。たとえば、昨日の午前中は、何かをしながらもダダリの

風景を思い描きながら、ここに最も似合う音楽を頭の中で流すという

ことにずっと興じていた。たとえばここの絵が気に入って2日続けて通

ったというリヒテルのピアノだったら? あるいはグレン・グールドな

ら? それともトスカニーニのブラームスの3番なら? 嵐の夜ならホ

ロヴィッツの弾くラフマニノフのピアノ・コンチェルトも合うだろうし、ぐっ

と新しいところで JiLL-Decoy association なんかも似合いそうだ。

人が織り成すドラマというものにもいろいろあるだろうが、私にとってド

ラマとは愛の経験に他ならない。私はダダリに流れる音楽と共に、こ

こから始まるドラマをいくつか想像してみた。

そうやって頭のなかに空想と妄想の犬を1匹飼うことで、私はしばらく

独り遊びをして楽しめそうだ。独り遊びは子供の頃から得意なのだ。

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私たちがお茶をした後、グラスとカップだけが残された東のデッキテ

ラス。カフェ・ダダリは『焼津から車で10分。大崩海岸の崖っぷち道路

を静岡方面に走り、2つ目のトンネルを抜けたらすぐ,海岸に下りる道

を右』と氏のブログにあった。いつかまた来られるだろうか ・・・

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 cafe DADALLI 金曜定休 午前10時から午後7時まで

            TEL / 054-627-7581

(この2日間で4日分くらいのテキストをアップしてしまったし、あとは仕事に集中

 たので、週末まではコメントのお返事と、数日ご無沙汰している方のところへ

 伺うだけにして、ニュー・エントリはお休みします。)

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2006年10月30日 (月)

駿河オフ会にゆく!③

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明けて2日目の、古民家の屋根裏から見た景色です。

夜中に激しくなった雨は明け方にはすっかりやんで、いい天気。

かやぶきの端についた雨粒が見えるでしょうか。

結局、昨夜は2時前に沈没するも、悪魔のような hashibamig 氏と

りんさんおもちゃはんの顔に書きに来て、その後も安全のために

点けた電気が眩しくて寝つかれず、意を決して最後に吊り橋を渡った

のは明け方3時半くらいだったろうか。もうこの吊り橋は夢に出てきそ

う。いつもなら日曜の朝は超寝坊の私であるが、もう8時前には階下

から小川のせせらぎと小鳥のさえずりに混じって、流しで食器を洗う

音が聞こえてくるではないか。それとともに囲炉裏の炭が焼けるいい

香りが・・・。通常では考えられないような身支度の速さで下に降りて

ゆくと、もうすでに男衆が朝食の用意を。慌てて手伝う我々。

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これまたおいしい朝粥とけんちん汁とお漬物、お粥にかけるとおいし

い炒り卵に、味噌田楽に、ガーリックの効いたお魚のソテーなどなど

昨夜の残り物とは思えない豊かな朝食を、またお腹いっぱいいただ

いたのでした。食後は、建築家の jigen さんから午後に行く芹沢美術

館の予備知識を講義していただいて、みんなで後かたづけをして水

車小屋を後に。腹ごなしに朝市に出かけ、それぞれ地元の安い特産

品を買って、お昼は『たろべえじゅ』にて、玄米菜食ランチを。さっき食

べたばかりであまりお腹が空いてないと言いつつ、ビュッフェ・スタイ

ルだったので、みんなおかわりして食べる食べる、なんだかこの2日

間、おいしいものをたらふく食べて常にお腹いっぱいだったような ・・・

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そして常に(?)呑んでいたのが hashibamig さん。さすが『食い倒れ

飲み倒れ、水車村の宴』というサブタイトルが付いていただけある!

そして、ここでいったんこの2日間の清算ということになったのですが

ここで私はまたびっくり。昨日のみんなの呑みっぷり食べっぷりじゃ、

最初のマックスの予算を更にオーバーするだろうと思っていたのに、

予想を遥かに下回る低価格。こんなに至れり尽くせりのオフ会で、

この参加費でやれるとは hashibamig さんのマネッジ能力に感服。

そしてランチの後は、このオフ会で私が最も惹かれたダダリ・カフェ、

そして芹沢美術館に行って、2日間の濃ゆくて長いしあわせな時間

は終わり。夕暮れの静岡市内を三々五々となったのでした。

予報を裏切り2日間ともお天気に恵まれ、おいしいものにも恵まれ、

温かい人々にも恵まれて、初めての楽焼体験をし、見たいと焦がれ

た景色もついに見て、貴重な出会いもあったこのオフ会。日本には

『同じ釜の飯を食った仲間』とか『一宿一飯の恩義』という言葉がある

けれど、初めて会う人たちとこんな経験をしたのは初めてです。

企画から準備、そして実際の運営と、クルマでの送迎やらお料理や

らと忙しく働いてくださった hashibamig さん始めとする駿河の皆さま

本当にありがとうございました。お金を払ってもできないスペシャルな

旅をさせていただきました。心から感謝です。そして一緒に楽しんだ

皆さまとも、またの機会を楽しみに。どうもありがとう!

行く前に温かいコメントをくださった方々にも感謝です。今日はレポー

トをアップするだけで終ってしまいそうですが、お返事は徐々にしてい

きますのでよろしく。そして、私が最も見たかった景色は別枠にて

coming soon ! ということで。 

****************************************************

あ、忘れてました。私の楽焼、というオファーもあったんでしたっけ。

最初から、土などいじったこともない私に満足いくものができるわけ

ないと高をくくって、ただ作るプロセスを楽しんだ私。私にとってはオ

フ会に参加するためのチケットみたいなもので、持って帰るのに都

合がいいから小さく作ったりもしたのだけれど、実際に焼いてみたら

土はやっぱり赤楽がよかった、もっと大きいのを作ればよかったな

どと思ったのでした。・・・・・ まあ、オフ会参加記念のスーヴニール

ということで。私の超ヘボ作です。お粗末!

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駿河オフ会にゆく!②

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私たちがお昼に向かった場所は、hashibamig さん御用達の風趣あ

ふれるお蕎麦屋さん、『卯乃木』。ここで、氏お勧めの天せいろ、天

ぷら付きの新蕎麦をいただくことに。見るからにおいしそうなぴかぴ

かの新蕎麦! (漆器に盛られた天ぷらはピンが合わずに割愛)

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そして、おまけに出してくれたのは、つわぶきと冬瓜かな。

hashibamig さんお勧めだけあって、とってもおいしゅうございました。

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そして再び窯場に行き、それぞれ自分の器に釉薬をかけて、ついに

楽焼開始! 燃料は炭。余熱窯で充分に温まった器を本焼き窯で焼

く。ブロアーで風を送って窯の温度を一気に上げると、キラキラと舞い

上がる火の粉。

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焼きあがった器は、バケツの水で一気に急冷するもの、籾殻で炭化

させるもの、同じ釉薬(hashibamig さん特製・透明釉)をかけて焼い

たのに、もともとの土や釉薬のかけ方、火の温度、焼成時間などで、

出来上がりは様々。火と土と偶然の織り成すケミストリー。

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そしてそれを繰り返すうちに、いつしか日も暮れてきて ・・・

日暮れと共に降りてくる山の冷気。樹木と土の匂いのする湿った大

気に溶けてゆく火の、煙の匂い ・・・ いっそう火のまわりが温かい。

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なんてきれいな火だろう ・・・・・・ 

私が見たかったもののひとつはこれなんだ。

火はいつまで見ていても飽きない。

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とっぷりと暮れた頃、ぶじ楽焼を終了して、我々は『ゆらく』さんの送

迎バスに乗ってお風呂に。ぱらぱらと降り出す雨。

水車小屋に帰って来たら、厨房からはいい匂いが ・・・・・・ 

囲炉裏端では干物を焼く人、できあがったきのこ汁を器によそう人。

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そして、おもむろに本日のお品書きを書き出す hashibamig 氏。

本日の目玉。 駿河湾の旬魚を12種!

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プロの寿司職人かと見まごう男衆のにぎりにて、お寿司屋でお金を

出しても食べられないような絶品のお寿司を心ゆくまで堪能したの

でした。みんなの口から口々に出てきた言葉は、「極楽じゃあ~」、

「しあわせ~」。異口同音とはまさにこのこと。食べたもの全部書き

出したいようだけれど、あいにくひたすら食べていたので全部は憶

えておりませぬ。とにかく何を食べてもおいしかった! 

そして一応の食の締めは、 扇松堂さん の和菓子と、今日焼いた

楽の器でお濃い抹茶という贅沢さ。

いま、これを読んでいる人、滅茶苦茶うらやましいでしょう?

しっかし極楽の後は hashibamig 氏始めとする、いつまでも疲れを

知らない化け物のような体力の老若男女とともに夜は更けて、最

初に寝た人から3人目まではオフ会お決まりの罰則(顔に油性マ

ジックでイタズラ書きされる)があるというので寝るわけにもいかず

時々襲ってくる睡魔のビッグウェイヴと闘い続けるという拷問が待

っていたのでした~ その間、雨のなか吊り橋渡ってトイレに行くこ

と数回。そのたびに揺れる脳みそ。(更に③に続く ・・・ )

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駿河オフ会にゆく!①

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土曜の朝、結局3時間くらいしか眠らずに5時起きして新幹線に乗り

向かった先は静岡。そう、この週末、私はこのブログにもリンクして

ある陶芸家の hashibamig さん主催の陶芸オフ会に参加していたの

です。それでは、ワイルドにして繊細な旅の全容(?)を ・・・・・・

静岡からJR東海に乗り換えて藤枝駅に予定通り9時45分に到着。

私と友人と同じく東京から来た nonacafe さんと岐阜の blespa さん

とともに、お迎えに来てくれた hashibamig さんと jigen さんの車に分

乗して、着いたところは上の水車小屋。かやぶき屋根のこの古民家

が、オフ会の会場&本日の宿です。

部屋の中には囲炉裏があって、田舎を持っていない私にもどこか懐

かしい風景。

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まずは hashibamig さんのお宝食材を冷蔵庫に詰めて。

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吊り橋に人数分の布団を干すのだ。

この日の宿泊予定数は約20人! なかなか壮観。

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「きゃあー、この吊り橋、けっこう揺れるぅ ~!」

最初から行く当日まで吊り橋のことばかり気にしていた、高所恐怖症

だという友人T.前日の夜になってから吊り橋を渡らないとトイレに行

けないことがブログに書いてあったと言って、嘆いておりました。(笑)

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そして吊り橋に布団を干し終わった水車小屋全景。

思わず、「長閑だあ~」と声に出して言ってしまった風景。

秋の陽にキラキラと輝く木立と川面。満艦飾のお布団。

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古民家からちょっと離れたところにある水車小屋。

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そして本日、楽焼を焼くために hashibamig さんが苦労して作った

特製の窯を見学。

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hashibamig さんが窯を温めている間に、我々は昼食に。

(以下、②に続く ・・・ )

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2006年10月27日 (金)

ショート・トリップ

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旅が好きな人は旅支度をしているときからもうすでに旅は始まってい

て、あれこれ想像しながら支度をしているときが1番楽しいんだってい

う。でも意外かもしれないけれど、わたくし旅が苦手です。

まず、重い荷物を持って歩くのが嫌い。

そこで、インターネットで、軽くて小さくて安いスーツ・ケースを見つけ

て買いました。けれど届いた箱を開けたら、思ってたより大きい。

たった1泊なのにこれじゃちょっと大げさなんじゃないの? と思いつ

つ詰めていったら、夏と違っていまの服はかさばるし、なんたって旅

館とかホテルとか民宿とかに泊まるんじゃない、ワイルドにして繊細

な旅なので、荷物はそれなりにいる。お土産のお菓子の箱も詰めた

ら、なんだかちょうどよくなりました。

・・・・・・ というわけで、わたくし週末、留守にします。

心の洗濯してきます。

それで真っ白いぴかぴかのハンカチになって帰って来ます。

帰ったら、私が見たいと切望した景色を、「ああ、これだったのか」

とわかるように、あなたにも分けてあげられると良いけれど。

甘くて軽快なイヴァン・リンスのスキャットを聴きながら ・・・・・・

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2006年10月26日 (木)

甲州街道はもう秋なのさ

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平日の午前に家の電話が鳴って出ると、受話器の向こうのその人は

「○○ちゃん。僕だ」と言った。

いま、私を名前でちゃん付けで呼ぶのは叔父くらいだし、僕だと言わ

れて私がわかる人も限られていると思うけれど、からかっているにし

ても声に心当たりが無くて黙っていると、その人はさっきよりあらたま

った声で、思いもかけない会社名と名前を言った。

「○○さん? どうしたの? ・・・ なんでここの電話がわかったの?」

「探すの苦労したよ。いま車の中からなんだけど、突然電話して、い

きなりこんなこと言って悪いけれど、ドライブでもしないか? 今日」

20年ぶりにいきなり電話してきてドライブ? 今日? 何それ ・・・

混乱した頭で考えてみたけれど、なんたって相手はKさんなのだ。

A社のみんなの憧れだったKさん。富士通オアシスの前で並んで仕

事をしたこともある。言ってみればただそれだけの関係だけれど。

でも私は彼が私の結婚パーティーに来てくれたときは嬉しかった。

ええい、こうなったら人生なんでもありだ。そう思ったらおかしな言葉

が口から出た。

「だったら甲州街道、走ってくれますか?」

「甲州街道? なんで?」

「理由は ・・・・・・ 特にない」

わかった、とKさんは言った。私は家を出られる時間を言って、彼が

いまどこにいるのか聞いた。彼は「迎えに行くよ」と言った。迎えに行

くよ。どこかで聞いた台詞だ。私は自分の住所を説明しながら、なん

だか頭がくらくらしてきた。これってほんとに現実なのか?

時間になって外に出てゆくと、近くの公園の前の木の下に、ネイビー

ブルーのスポーティーなセダンが停まっていた。近寄るとKさんが乗

っていた。彼は少し歳とったけれど、相変わらず端正だった。いまで

も私の家のどこかにあるはずだ。私が会社を辞めるときに、人事部

から盗んだ彼の写真が。

それからどれくらい、どこをどう走ったのか憶えていない。私はもとも

とクルマの運転をしない上に方行音痴だし、それに緊張していたのと

現実に頭がついていけないせいで、ぼおっとしていたのだった。

私たちは20年ぶりに会ったのに、ほとんど何も話さずに、フロントグ

ラスに流れる景色を見ていた。

「○○さんて、大人なんだね」と、先にKさんが口を開いた。

「大人? どうして?」

「いきなり電話してドライブなんかに連れ出したのに、何も聞かない

 から」

「ああ、それは大人なんじゃなくて、この状況に頭がついていかなく

 て、ぼおっとしてただけ。ごめんなさい。聞いた方がよかった?」

「いや。返って聞かれないほうがいい」

Kさんは、前を向いたまま言った。

ああ、やっぱりそうなのか、と思いながら私は黙った。

確かにしようと思えば月並みな質問ならいくらでもあるような気がした

けれど、そんなこと聞いてもしかたがないし、それならむしろこの非現

実的な時間の中でたゆたっているほうがいいように思えた。それに人

の話を聞くことで、不用意に心の琴線を揺らされたりするのもいまは

避けたかった。

「海外勤務が決まってね、この間から部屋の中をかたずけてたんだ

 けれど、そしたら昔の写真がいっぱい出てきて、その中にいつか

 みんなに三井クラブで誕生日をやってもらったときのが出てきて、

 そこに○○さんも写ってた」

「ああ、あの時のね。懐かしいなあ。あれ、いくつの誕生日だっけ?」

「28。それで、そこに写っている人たちも、もうほとんどは会社を辞め

 ててどこにいるのかわからないし、唯一会えそうなのが○○さんだ

 ったんだ」

「なるほど。海外勤務ってアメリカ本社?」

「うん」

「すごい。奥さんは喜んだ?」

「最初は喜んでたけどね、実際に行く日が近づいて来たら、今は日に

 日にブルーになってるよ」

「そう。大変ね ・・・・・・」

それから私たちはパーキングのある街道沿いの感じの良さそうな喫

茶店を見つけて、そこでお茶をした。クルマを降りると、外は秋特有の

煙くさい匂いがした。話はほとんど20年前のことで、もう名前さえうろ

覚えの仲間の他愛ない話をして笑った。お互いのことも少し話した。

オフィス以外でこんな風にKさんと話したことはなかったけれど、相変

わらずKさんは育ちが良くて優しいんだなと思った。こんな人と結婚し

た女性はしあわせだろう。

再びクルマに乗ったとき、Kさんが

「どこかでおいしい夕飯でも食べて帰らない?」と、聞いた。

「ごめん、もう帰らなきゃ。どこか適当な駅前で落としてくれる? 

 おいしい夕飯は自分で作らなきゃ。Kさんも夕飯は家族と食べた方

 がいいよ」

私がそう言うとKさんは、そうだな。OK、と言ってクルマを発進させ

た。降ろしてもらう駅前に近づいてきたとき、私は初めて「ほんとは何

か話したいことがあったんじゃないの?」と聞いた。彼は「いや、そん

なことないよ。でも、なんだかわからないけど、今日は○○さんといて

落ち着いた。今日はありがとう。アメリカに発つ前に会えてよかった」

「私も思い出してくれてありがとう」。

ところで、とKさんが言った。「なんで甲州街道、だったの?」

「ああ。忌野清志郎の歌に『甲州街道はもう秋なのさ』って歌があっ

 てね、昔、日比谷野外音楽堂で聴いたことがあるんだけど、この

 あいだ甲州街道沿いの道を歩いているときに、ふいにそれを思い

 出したの。それでかな。」 

私が言うと、Kさんは「○○さんは相変わらず音楽好きだな」と言って

笑った。

クルマは夕方の混雑した駅前のロータリーをくるっと回って止まり、私

たちは手を振って別れた。「それじゃ、元気で頑張ってね」。

たぶん、もう会うことはないだろうなと思ったら、また非現実的な、不

思議な感覚に襲われそうになった。

忌野清志郎の『甲州街道はもう秋なのさ』はこんな歌だ。

  たばこをくわえながら 車を走らせる
  甲州街道はもう秋なのさ
  ハンドルにぎりながら ぼく半分夢の中
  甲州街道はもう秋なのさ
  もう こんなに遠くまで まるで昨日のことのように
  甲州街道はもう秋なのさ

先日、思い出したときには歌詞のことなんかすっかり忘れていたのに

どうやらこの歌は恋人に裏切られた歌らしい。

潜在意識ってどこまで鋭いんだろう。

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2006年10月25日 (水)

雨のあと

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今朝はやっと雨が上がって、すっきりとした青空が広がった。

気温も一気に上がって、昨日の15度から今日の20度へ。

長袖カットソーを着て、ちょっとベランダにいるだけで頭が熱くなる。

平年並みの10月下旬の陽気。

バラも太陽を浴びて輝き始めた。

どんなに雨に打たれても、ひとたび陽が射せば何事もなかったように

また晴れやかな顔で咲く花が好きだ。

人の心もこんな風であれたらと思う。

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2006年10月24日 (火)

おうちへ帰ろう

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私の住んでいるところはここ3日間、雨が続いている。

今日はずいぶんと冷え込んだ。

コットンのカットソーを重ね着しても追いつかず、やっぱり猫セーター

(着古しのくたくたのカシミア)を引っ張り出して着ることになった。

寒さを我慢するのは耐えられない。

ラジオを聞いていたら、今日ついにヒーターをたいてしまった、という

人もいたから、本格的な季節の移り変わりを感じずにはいられない。

気分は秋を飛び越して冬のことを。

寒くなると自然と気にかかる人がいる。寒い季節ともなればよけい、

家で食べるあったかいご飯がいい。家族で温かい食卓を囲める人は

しあわせだ。早くおうちに帰ろう。

歩きながら冷蔵庫の中にある食材を考えていたら、こういう日はやっ

ぱりシチューでしょう、となった。

・・・ というわけで、カボチャのシチュー。

カボチャ、ニンジン、タマネギ、しめじ、コーン、ベーコンにソーセージ

も入った具沢山シチューです。

Pumpkin

それから今日、ほぼ日(ほぼ日刊イトイ新聞)の『注文の多いストア』

にオーダーしていた、ザンパノさんの紙ぶくろが届いた。こんなヤツ。

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紙袋といってもナイロン製で、コンセプトは『永久紙ぶくろ』。

つまり紙袋のような形をしたナイロン製のエコ・バッグです。

夜中にダリオ・ポニッスィ演じるザンパノさんのプロモーション画像を

見ていたら(面白いから、ぜひ見て)、つい買ってしまったんだけれど

マチが広いから、けっこういっぱい入りそう。色はイタリアの代表的な

食材である、トマト、オリーブ、チーズ、エスプレッソをモチーフにして

いて、とってもカラフルだ。子供に好きなのをあげると言ったら、息子

はエスプレッソ、娘はトマトを取った。実に、らしい。

荷物には宛名の横には、こんなほぼ日シールが。

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1人はひとりぼっちじゃない。愛があればね(^-^)

ってところだろうか。バッグにはイタリア語でこれと同じ文句、

SOLO MA NON SORITARIO と書いてある。素晴らしい。

そういえば前に仕事でロック歌手の金子マリさんに会ったら、彼女

は、「音楽をやる1番いいことは、人は1人では生きられないってこ

とがわかることだ。音楽は1人じゃやれない」と言っていた。

これまた素晴らしい。

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2006年10月22日 (日)

恋はいつも未知なもの/村上 龍

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You don't know what love is.

直訳すると「あなたは恋が何か知らない」だ。

実際にそれで曲目リストに載っていたジャズのCDがあったはずだと

いまちょっとCDラックの中を探してみたが見つからなかった。意訳し

て、「恋はいつも未知なもの」。でも私はむしろ前者のほうがいい。

だって恋によらず人生は全て Tomrrow never knows なんだから。

そして、これは前にも少し書いたことだけれど、私が人生で最も傷心

だったある年の冬のこと、見かねた友人から、彼女の実家である滋

賀に一緒に行かないかと誘われた。母親から厳しく躾けられ、ごく普

通の常識人でもある私には、もちろん暮れ・正月というのが家族にと

って最もプライヴェートで、家族水入らずで過ごしたい時間であること

はわかっていたけれど、それをしても私にとってはあまりにありがた

い申し出だったので、私はそれを素直に受けることにした。子供を連

れて旅行に行くのなんてとても久しぶりのことだった。まだ2歳半の

下の子なんて、旅行に行ったことすらなかったと思う。

ある日、旅の支度をするために、子供のものを買ったりしたついでに

私は何気なく自分の好きなショップに立ち寄った。買うつもりもなくコ

ートのラックを見ていて、とてもオーソドックスなダークネイビーのPコ

ートを見つけた。私が見ているとさっそく店員が寄って来て、「はおる

だけでもはおってご覧になりませんか?」と言った。私は直感的にや

めたほうがいいだろうなと思ったけれど、彼女はもうPコートを私に向

けて広げていたので、私は腕を通した。はたしてそのPコートは私の

予想通り、羽のように軽かった。イタリア製の上質な生地を使ってい

るのだ。そしてそれは ・・・・・・ 私に似合った。

「すっごく軽くて、あたたかい」

私がそう言うと店員は「そうでしょう」と言わんばかりににっこりした。

結局、私はそのPコートを取り置きしてもらうことにした。その日、持ち

合わせがなかったのと、クレジットカードを使いたくなかったのと、即

決するには、そのときの私にはそのPコートは高すぎたからだ。

「お取り置きは1週間以内です。キャンセルの時はお電話ください」

彼女はそう言って控えを私にくれた。

そしてこれを人に明かすのは初めてのことになるけれど、私はその

とき自分にひとつの賭けをした。具体的には書かないが、賭けに勝

ったら私はそのPコートは買わずに、クロゼットの中の古いコートで

間に合わせて滋賀に行く。負けたら ・・・・・・ 。

負けたら私はそのコートを買うことにする。

そして結局、私は賭けに負け、パートタイムで働いた微々たるお給料

の全部を持ってそのショップに行った。そんな高価なものを現金で支

払うのは初めてだった。店員がお札を数えている間、私は自分の好

きなブランドの新しいコートが手に入るのに、苦い思いでいっぱいだ

った。ショップの店員は機嫌よく出口まで見送りに出てきて、丁寧に

おじぎをした。渡されたブランドのロゴの入ったショップバッグを肩に

かけて、暮れの寒々しい街に出ると私は思った。仕方が無いわ。私

にはこの冬、暖かいコートが必要だったのよ、と。

そのPコートを着て子供を連れて友人と新幹線に乗った。彼女は新し

いコートが私にとても似合うと褒めてくれた。京都に着いて改札で切

符を渡すと、「おおきに」という言葉が返ってきて、私はそれだけで和

んだ。そして滋賀では友人の両親が、暮れに他人の家に親子で押し

かけるという私たちの非常識さをもろともせずに、とても温かく迎えて

くれた。

「遠いとこよう来はったなあ。大変やったなあ」と友人の母は言った。

私はそこで世話になるかわりに食事の支度をしたり、家族分の洗濯

をしたりした。友人の母は私が父の洗濯物まですることに慌てていた

けれど、私には父親の洗濯物だけ別によけてする習慣がなかったの

だ。友人の両親は温かく接してくれたけれど、他人に過剰に干渉す

る人たちではなかったので、私も居心地は悪くなかった。

ただその頃かなりの活字中毒だった私は、そこで読むものが無いこ

とにすぐに渇望してしまった。それで、私以上に活字中毒と思われる

後から1人でやって来た友人の夫を誘って街に出ることにした。Nは

すぐに快く承諾した。私達は寒いなかマフラーを巻いて、駅の後ろが

すぐ琵琶湖という湖西線に乗り、2駅か3駅先まで行った。うろ覚え

のNの記憶にしたがって、駅からずいぶんと歩いて、やっと品揃えの

悪いコンビニみたいな書店にたどり着いた。そして2人して別々に本

屋の棚を見てまわったが、お互いとりたてて読みたい本を見つけるこ

とはできなかった。

でもせっかく電車に乗ってここまで来たんだし、何か1冊買おうと思っ

て単行本の棚を見ているときに、村上龍のこの本を見つけた。手に

取ってぱらぱらっとやったところ、ライトバースだけど悪くなかった。

つまり旅先で読むのに、Nが好きなウンベルト・エーコみたいな長編

で難解なものを読む気にはなれないし、かといって雑誌の記事みた

いのでも困る。

「これにする」。私はNに言ってレジで会計をした。店を出ると、なんと

外は吹雪いていた。吹雪のなかをNと「さみー」と言いながら歩いた。

おはぎの実演をやっていた丹波屋で、できたてのおはぎをお土産に

買って帰ると、何を食べさせても「うまいわあ」と言ってくれる素晴らし

い友人の父は、「丹波屋のおはぎや! こら、うまいわ」とたいそう喜

んでくれた。

結局、村上龍のその本は、帰りの新幹線の中で読んだ。どんな内容

かというと、心に何かしら痛みを持った中年男の前にだけ、あるタイミ

ングで忽然と現れる幻のジャズ・バーがある。そこではピアノ・トリオ

をバックに女性ジャズヴォーカリストが歌う甘く切ないスタンダード・ナ

ンバーが麻薬のように流れていて、そこで傷ついた男は安らぎ、救い

を見出すことができるのだ。けれどもう一度行きたいと思っても、それ

は幻のバーであって本当の所在すら定かではなく、再び行くことはで

きない。そのジャズ・バーを軸に、39曲のスタンダード・ナンバーに寄

せて展開される、39のストーリー。

ジャズが好きな人なら、ジャズという音楽が醸し出す、独特なインテ

ィメートな雰囲気と空間を想像することができると思う。

思うに女性はどちらかというと村上龍より春樹のほうに共感する人が

多いんじゃないかと思うけれど、私はときどき龍も読む。うまく言えな

いけれど、龍のほうが春樹よりフィジカルで、つまり男っぽく、男の論

理で一応合理的に書きながら、そこにどうしようもない切なさがあって

色っぽい。春樹の文体には色っぽさは感じないが、龍にはもう少し体

温がある。私は時々、自分の頭をフィジカルに男っぽく合理的にした

くて、それから(見たいような見たくないような、だけれど)男のリアル

な本音が見たくて、村上龍を読むのかも知れない。

彼はジャズについてこう書いている。「ジャズは、優しい。しばらく、放

っておいても、いつも、憶えていてくれて、付き合ってくれる女のよう

に、優しい」。まあ、実に勝手なものだ。ここには、そういう身勝手な

男がほぼ39人出てくる。硬派な女だったら、読みながら男の身勝手

さに腹が立ってくるかも知れない。けれど私の中には、そういう駄目

な男に多少共感してしまう駄目な部分があって、それなりに楽しんで

この本を読んだ。そして何より、ここに出てくる幻のジャズ・バーに行

ってみたいと思った。その頃、私はすでに中年の域に入りかけていた

し、充分過ぎるほど傷ついていて、私にもそこに行くだけの資格はあ

ったはずだ。ただひとつ、私が男ではないという決定的な理由を除い

ては ・・・

清水翠はジャズのスタンダード・ナンバーを歌う前に、ちょこっとその

曲にかわいい注釈を入れてくれる。私はそれがとても好きだ。

私は翠ちゃんに『Bluesette』でも歌ってもらおう。

以下、長くなったついでに、参考までに目次を。

Murakami_ryu_01

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2006年10月21日 (土)

休日のブランチ

Brunch

休日のブランチにはスパニッシュ風のオムレツを作ることが多い。

これはジェロニモのチョリソーを真似た。ジェロニモのチョリソーは

熱々の鉄板に並べられたチョリソーに、細切りのパプリカとピーマ

ンが添えられて、薄く卵がかかっているものだけれど、これが絶品

なのだ。私はニンニクのみじん切りをオリーブオイルで炒めて、鷹

の爪を2本輪切りにして入れて、そこにスパイシーチョリソー、たま

ねぎとピーマンの薄切り、じゃがいもの細切りを入れて炒め、塩・

コショウで味付け、チリなんかもあったら入れて、半分に切ったプチ

トマトを散らして、最後に卵4個分を流して蓋をして蒸し焼きにする。

この前に起きてすぐにアボカド・ジュースを大きなコップで1杯飲んで

いるから、朝としてはこれで充分。あとは珈琲。スポーツをする前に

珈琲を飲むのは良いらしい。あと、スポーツの直前にマグネシウム

を摂ると筋肉が柔軟になって良い。ヴォーカリストも同様に歌う前に

マグネシウムを摂ると声帯が柔らかく開くようになるから良いそうだ。

今日は3週間ぶりのスイミング。結局、その間1度も市民プールには

行けなかった。毎日寝たのは2時か2時半。最悪。私はなかなか自

分の生活を改善できない。たぶん今日は苦しい思いをするだろう。

久しぶりに見た夢の中では私は現実にはちょっとないくらい気持ち

よく泳いでいて、「なんだOKじゃないか」などと思ったけれど、ああ

はいかないだろうな。ターンをするときには身体をどっちに傾けるん

だっけ?! ああ ・・・

デュセス・ド・ブラバンは実に花つきが良い。いまはこんなだ。

Duchesse_de_brabant_02jpg

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2006年10月20日 (金)

カナルカフェで

Canal_cafe

人の縁というのはほんとに不思議なものだと思う。

Tが東京の大学受験に2年続けて失敗して、ついに荷物をまとめて

広島に帰ることにしたその日、世話になった馴染みの喫茶店に挨

拶に行って偶然Jに会った。あと少しでも時間がずれていたら、2人

は会うこともなかった。そこでわずかな時間に2人は意気投合し、T

はJに「こんど広島に遊びに来ないか?」と言った。その一言だけで

Jが本当に広島にTを訪ねて行かなかったら、2人の関係も今には

至らなかった。

そしてまた別な日、私が夕方いつもの喫茶店のカウンターで珈琲を

飲み、そろそろ帰ろうかと思った頃に、カウンターの向こうで食器を

洗いながらJが言った。

「そうきち、今日まだ時間ある? あるんだったらもう少しいなよ。も

 うすぐオレの双子の弟が来るからさ。クォーターなんだ」

「えっ? Jちゃんて双子の弟なんかいたの? それに弟がクォーター

ってことはJちゃんもクォーターってこと? 全然見えないんですけど」

「弟の顔、見りゃわかるよ。オレたち双子だけど二卵性双生児だから

 顔はぜんぜん似てないんだ」

真顔で言うJに、半信半疑ながらもすぐに騙されてしまう私は「わかっ

た。面白そうだからまだいるね」と言って、そのままカウンターで待っ

ていると、はたしてTはやって来た。Jの言うとおり確かにTはちょっと

外人みたいな顔をしていた。いまで言うと、『レナードの朝』のロビン・

ウィリアムズにそっくりな感じ。Tと話して、もちろんすぐにそれはJの

嘘だとわかったけれど。そこで、いつもは人見知りで、いつもは初対

面の女の子となんかよう喋らんというTは滅茶苦茶よく喋り、2時間く

らいも話したろうか。私の母は門限にうるさいし、お腹も空いたし、き

りがないので「じゃあ、今日はもう帰るね」と言って立ち上がったら、T

が私のレシートを奪い取って言った。

「おまえ気に入った! 珈琲はワシがゴチしたる!」

「え、いいよ。そんな、いま会ったばかりの人にゴチなんてしてもらえ

 ないから。それに私、ストロング2杯も飲んじゃったし」 

驚いて言う私にTは、「ええよ。またな」と言ってニカっと手を振ってみ

せた。それで私は素直に「ごちそうさまでした」を言って帰って来たの

だ。帰ったら私の帰りが遅いと、やっぱり母は怒っていたけど。

以来、あっという間に二十数年。

もうずいぶん日にちが経ってしまったけれど、実は先日、Tと南青山

の万年筆屋さんに行った後、カナルカフェに行った。

ひと月も前にTが電話してきて「行きたいところがあるんだ」と言った

時「私も行きたいところがあるんだ!」と言っていたのだ。それを覚

えていたTが、それじゃ今度はそうきちの行きたいところに行こうか、

ということになったのです。ここは、飯田橋駅そばにある、お堀で80

年来営まれてきたボートハウス。いまはオープンエアのレストランと

して改装されて、すっかりデートスポットとなったようだ。TVドラマにも

しばしば登場する。

Canal_cafe_01

Canal_cafe_02

単純に私はウォーター・フロントが好きで、前からいちど来たくてここ

へは以前にも女友達と来たのだが、その日は月曜定休で入れなか

ったのである。でも、もっと早い時間のカフェ・タイムに来ようと思っ

ていたのに、このときすでにディナー・タイム。Tと私とじゃお互いデ

ートにもならないし、昔から「ワシは無駄な投資はせん」と言いつつ

よっぽどお金が無いとき以外はTのごちになってしまうことを考えて、

「でも夜はちょっと高かったんじゃなかったかなあ。私はカフェ・スペ

ースで軽くお茶して帰るんでもいいよ」と言うと、Tは「いいじゃない。

せっかく来たんだから、ここで飯食っていこうよ」と言う。うん、Tがそ

れでいいならいいよ、と案内された席は夜景の見えるテラス。

Canal_cafe_04

Canal_cafe_06

Canal_cafe_05

・・・ と、こんな風になかなか良い雰囲気です。

この日は夜になっても暑いくらいで、テラスにいるのが最高に気持ち

よかった。ちょっともう何を食べたか詳しくは覚えていないのだけれど

アンティパストに白身魚のカルッパッチョとサラダとラグーとパスタに

ピッツア、という感じ。Tはそれにビール。ごちしてもらうのに、ロケー

ションは最高だけれど高くて不味かった、だと嫌だなあと思ったけれ

ど、Tが「さすがにここ、うまいな」と言ったくらい何を食べてもおいしか

った! ボリュームもたっぷりで、最後のマルゲリータは無理して押し

込んだ感じ。もう、お腹いっぱい。しあわせ。

私の人生はそこそこ安泰に行っている男友達たちにくらべると少々お

かしいことになってしまったけれど、最近、古い男友達と話していて

楽しいのは、お互いの仕事について話せること。これは私が専業主

婦だったら無理なことだったと思う。昔から私のポジションというのは

ちょっと不思議なポジションだったのかもしれないが、男友達は家庭

のことから仕事のことまでなんでも私に話す。きっとこれは家では話

さないんだろうなと思うようなことまで。その中でも仕事の話ができて

たまにはお互いの仕事で協業できないか、なんてことになると、仕事

は俄然楽しい。およそ色気とはかけ離れてるけれど、返ってその方

が居心地がいいくらい。Tが席を立った間に目を移すと、他のテーブ

ルではワインを前にいい感じでデートするカップルが ・・・ そうよね。

ここってほんとはそういう場所よね。

Canal_cafe_03

戻ってきたTに、「今度はぜひ妻を連れて来てください」と言い、

「おう。そうだな」などとTも言いつつ、カナルカフェを後にした我々。

そしてこの3日後の台風の夜には、いつものメンバー+Tの甥で、い

つものジェロニモに行ったのであった。こんな雨の中まったく酔狂だな

などと思いつつ出かけて行った私だけれど、行ってしまったら楽しく、

この日は食べ盛りの19歳もまじえてしこたま食べた。

最後に I が、「そうだ。今度みんなで広島に行こうよ」と言い出し、「い

いね。私はいちど尾道に行ってみたい」「潜水艦も見たいしな」なんて

みんなで自然に盛り上がるなか、私はひとり、歳月を経て古い男友

達との関係はますます優しいものになってきたなあ、などとしあわせ

な実感をしたのでした。

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2006年10月19日 (木)

Talk to you

Talk_to_you

私には彼女が、「私は○○○○○○」と言っているように聴こえるの

だけれど、あなたにはなんて聴こえるでしょう ・・・・・・

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2006年10月18日 (水)

秋の陽の中で

Yorokobi

生きる歓びは空から燦々と降ってくる。

日なたにいるあなたの頭をあたため、

睫にも降りそそぐ。

虹色のプリズムになって。

眩しいな。

Yorokobi_01

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古いバラ、復活!

Revive

これは我が家でもっとも古いバラの株。

もうかれこれ12、3年前も前、私がまだオールドローズもイングリッ

シュローズも知らなかった頃に、当時、伊勢丹の1階にあった『ロー

ズギャラリー』の店先に飾ってあったミニチュアローズの鉢に目が留

まって、結婚記念日も近かったし、私としてはかなり悩んで奮発し

て、赤と白とピンクの鉢を送ってもらうことにした、そのひとつだ。

そのバラたちは数年間は素晴らしく咲いていたのだけれど、度重なる

引越しやら何やらで最も弱い白バラが一番先に駄目になり、何故か

強いはずの赤バラもいつのまにか枯れて、最後に残ったのがこのピ

ンクのバラの木。株はすっかり古くなって盆栽のように堅くなり、ここ

数年は新しいシュートを出すこともなく、たまに小さいひねた花を咲か

せる程度だった。先日、ローズカフェのオーナーと話したときにも『株

の寿命』という話が出たから、きっとこのバラもそろそろ終わりなんだ

ろうと思っていた。ところが何が良かったのだろう?

鉢のサイズを少し大きくしてバラ用の土と牛糞を足したことなのか、

9月の半ばに施した苦土石灰と有機肥料が良かったのか。

それ以降みるみる勢いを取り戻した。次々に元気な緑の葉っぱが出

てきて、つぼみもついた。今はこんな風に咲いていて、株元からは数

年ぶりに新しいシュートも出ている。嬉しい!

こうなるともう私の気持ちが伝わったような気分。花咲かジイサンみ

たいな気分だ。もともと花屋の店先に捨てられるように置いてあった

枯れかけのミニバラを買ってきて再生させてから、すっかりバラを育

てる喜びに目覚めてしまった私。だからバラはやめられない。

去年、たったひとつだけ花を咲かせた枯れかけのグラミス・キャッス

ルもここまで復活した。あともう少し。

春から夏までずっと日照不足だった今年。

我が家のバラたちが元気になったのは、最近ずっと続いているお天

気のせいもあるんだろうな。太陽の光ってほんとにありがたい。

人にも植物にも。

お陽さま、ありがとう!

Revive_01

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2006年10月17日 (火)

日の入り

Akinohi_03

秋の日はつるべおとしの言葉のごとく、あっという間に暮れゆく今日。

大きな鳥の羽のようにふわふわ揺れているのはパンパスグラス。

日の暮れまでに帰らないと母に叱られた、子供の頃が懐かしい。

「ただいま~!」

「おかえり」

台所から漂う、夕ごはんの匂い。

さて、私は今夜は何を作ろうかな ・・・

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2006年10月16日 (月)

秋の瞳

Cosmos_04_2

強い風でなぎ倒されても

ひたむきに透き通った青空を見あげる

しなやかでたくましい

そして、美しい

秋の瞳。

Cosmos_02_2

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心は雲のように

Kumo_005_7

今日もすっきりと晴れた。雲ひとつ無い青空。

昨日は寝るときに、前に医者にSOSを出したときにもらって結局1錠

も飲んでなかった薬を飲んでから寝た。もうすっかり疲れていてそん

なものを飲む必要もないように思ったけれど、お陰で寝たのはいつも

の2時過ぎだけれど、ぐっすり眠った。眠るって大事だ。

昨日、あんな風に書いたけれど、こんな青空だから気をとり直して

今日も書こう。書くことはいくらでもあるし、結局、私には書くことしか

ないんだから。 それが評価されてもされなくても、たとえ愛されても

愛されなくても。

いつか、シンガポールに行って最低2年は帰ってこない友人に会った

とき、私は彼女に聞いた。彼女は人を、外に見えているものだけじゃ

なくて、内なるもので察知できる(直感のある)人だったから。

「あなたが行ってしまう前に、前から一度聞いてみたいと思っていた

ことを最後に聞いておきたいんだけれど、今の私を見てどう思う? 

何か間違ってることとか、こうした方がいいということがあったら教え

てくれないかな。正直に言ってほしいんだ。アドヴァイスが欲しい」

すると彼女はしばらく私を眺めてから、「う~ん、わからないな。○○

さんて変わり続けてる人じゃないですか? 会うたびに全然印象が

違う。でも、いまは停滞。かな」と言った。

「鋭いな」、と私は言って笑った。

私はいつもいまの自分を好きになれなくて自分を変えることをしてき

た人間だから。それは外面的にも内面的にも。それに私が好むと好

まざるとによらず環境によって(たとえば転職するたびに必要とされ

る能力を身につけるために)自分を変えてきた、というのもあるし。

「できない」と言った時点で仕事の可能性は断たれてしまうから。

でも私だって昔からそうだったわけじゃない。ずっと『依存』という枠

の中で変化することをあきらめていた、たぶん。

それに今だって、私はずっと変わらないことでひとつのスタンスを示

そうとするタイプの人間であって、たぶんその最もコアなところでは

今でも全然変わってない。いつか、職場の硬派の男性に「○○さん

ていつも一貫してますよね。考えにブレがない」と言われたけれど、

それは良い意味でなんだと思う。ただひとつ昔と違うことがある。

昔は、と私は言った。

「昔は変わってしまうことが嫌だったんだ。人や人の気持ちが簡単に

変わってしまうことが苦しくて苦しくてたまらなかった。でも、いろいろ

と苦しんだあげく、やっとこの歳になって、この世の中で変わらないも

のなんて何ひとつ無い、それは自然も人の心も同じだってことを、論

理としてじゃなく、やっと実感できるようになったんだ。そして、それは

いいことのように思う」

私がそう言うと、彼女は私も同じだ、と言った。自分もそれでとても苦

しんだと。そして、○○さんには変化を受け入れるだけの強さがある、

こんど会うとき、お互いがどう変わっているか楽しみだね、と。

人は思いのほか変化を嫌う生きものだと思う。それは歳をとればとる

ほどそうで、馴染んだ習慣、慣れた環境、慣れた相手との間で人は

安らぎを感じ、ひとたびそこに変化が生じて物事がうまく運ばなくなる

と、それは即ストレスになってしまう。頑なに自分のスタイルを守ろうと

して、大事な人さえ傷つけしまう。

でも、心に柵や壁を作っているのは自分自身であって、心は本来も

っと自由なものなんだと思う。この雲のように。

いまあるものが失われる、という観点では変わることはマイナスでも

新たな形になる、と考えるならそれはプラスにもなる。より良い形に

なるかもしれないのだ。今より。

私の最もコアなところは私自身、あなたの最もコアなところはあなた

自身であって、変わらない、変える必要がないけれど、昨日の雨を

今日晴れに、昨日の小さなNOを今日YESに変えることくらいはでき

ると思うんだ。気持ちしだいで。

変わる、変われるってことは、私にとっては希望そのものに思える。

あなたが出張に発つ日が、こんな晴れの日でよかった。

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2006年10月15日 (日)

sign

Tennis_court_2 

今日は言葉がぜんぜん出てこない。

いま、朝バスタブのお湯に浸かってなんとなく考えたことを書いてみ

ようとして、うまくいかないのであきらめた。

今日最後に撮ったのは上の写真だ。放置され荒れ果てたテニスコ

ート。今日の私の心象風景はこの1枚で充分かなと思う。

今日、6年ぶりにある場所を訪れた。

以下、秋のセンチメンタルなショート・トリップ。

今日はあまり写真に説明を加えたくない。私以外特定の人にしかわ

からない写真が多いので、単純に自分の記憶のメモとしてだけアッ

プすることにして、コメント欄は閉じさせていただきます。

Rokakouen_ekimae

変な偶然だと思う。6年前の夏の終わりにここを通りかかったときも

伊勢丹クイーンズシェフが閉店したばかりで、1階路面のガーデニ

ングショップだけが荒れた感じで残っていたのに、またもフードセン

ターはクローズした直後だという。いつかもここでバラを見た。

Rokakouen_ekimae_01

世田谷美術館。6年前はここに谷川俊太郎展を見に来たんだった。

今日は『宮沢和史の世界』をやっていた。結局、見なかったけれど。

Setagayabijyutsukan

美術館のロビーから庭を見たところ。

Setagayabijyusyukan_01_1

芦花公園。

ここについては今日たまたまJ-WAVEの『Time for brunch』

紹介されていたので、そちらをご覧ください。

Rokakouen_2   

Rokakouen_07

青竹の鬱蒼たる竹林。

Rokakouen_01_1 

世田谷美術館の前の道に立ったときもそうだったけれど、ここへ

きたらデジャ・ヴュが起きたかと思った。6年経ってひとめぐりして

同じ場所に戻って来たような ・・・ 。私は何をやってるんだろう。

Rokakouen_02

明治の文豪“徳富蘆花(とくとみろか)”が、住んでいた家。

Rokakouen_09_1

そして書斎。

Rokakouen_08_1

母屋。

Rokakouen_03

母屋の中。

Rokakouen_05

Rokakouen_04_1

蘆花という人はトルストイの示唆で『美しい農民』を目指して晴耕雨

読の暮らしをしていた人だそうで、家の佇まいも質実剛健な感じで、

どちらかというと生活感にあふれたシャビィな感じ。夕暮れにこの母

屋の中にいたら、もうここにいてはいけないという気がして急いで出

てきた。今日はなんだかとっても長い一日だった。

いっきに3つくらい歳をとった感じ。

ひどく疲れたので、数日ブログはお休みします。

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2006年10月14日 (土)

秋晴れ

Cosmos_10

今日も秋晴れ。

私は今日、プールに行くことをあきらめた。

先週も先々週も泳いでないから、身体は泳ぐことを欲しているけれど

今日は心の集中を欠きたくないから。

私にはいつも自分より大切にしているものがあることを

あなたにわかってもらえるだろうか

今日も壊れやすいものを抱いて生きてゆく

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2006年10月13日 (金)

風に舞う君

Cosmos

秋の透明な光のなかで

はかなげに風に揺れる君は

風車みたいに

いまにも高い空に飛んで行ってしまいそうで

ぼくは落ち着かない

草の匂いのする少年のような君は

少女の愛らしさも湛えて

いったい君を嫌いな人なんているだろうか ・・・

君が呼び覚ますのは 

遠い日の懐かしさと憧憬

徐々に日の傾く秋の原で

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Cosmos_03_2_4   

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2006年10月12日 (木)

ローズヒップの中身

Rose_hip_07

先日、みちこさんから送っていただいたローズヒップの中身です。

カッターで切れ目を付けて、半分に割ったらこんな風。

けっこうたくさん入っています。

上はコンプリカータ。下はアンジェラ。

アンジェラは種の大きさにかなりバラつきがあって、やっぱり小さな

種より大きな種の方が発芽率が良さそうに見える。

Rose_hip_08

エクスプロア。この種は多角形みたいなでこぼこした変な形の種。

やはりこれも種の大きさにかなりバラつきがあって、大きいものだけ

撒いたほうが良さそう。

Rose_hip_11

そして、ヨーク&ランカスター。

実が小さくて細長いせいか、中には大きめの種が1個づつ入って

いるだけ。

Rose_hip_10_1

最後は、ロサ・ラクサ。

幾何学模様みたいに規則正しく種がぎっしり詰まってる。

Rose_hip_09_1

・・・ と、実の色も形も違えば、中身の種もこんなに違う。

きれいに種を取り出して並べてみました。こんな感じ ・・・

(ポップアップすると大きく見られます。)

Rose_hip_12

私のブログにリンクしてある『野の花ガーデン』によると、この種をごし

ごしこすって、選別のために水に漬けて(中身が軽いのは浮くから)、

それから11月か12月に撒くのだそうです。

興味のある方は参考までに  →  バラの種を撒く

ちなみに、みちこさんにお礼方々お電話して、「いま撒いたら駄目な

の?」と聞いたところ、本当はやっぱり寒くなってから、12月中旬く

らいがいいそうですが、いったん種をしばらく冷蔵庫に入れてから撒

いてもいいんじゃないか、とのことでした。つまり種に「もう冬になった

よ!」ってことを認識させればいいってことですね。なんだか可笑しい

けれど。私は面倒なので、これでいくことにします。

はたして来年、無事に芽が出るでしょうか?! 運命やいかに ・・・

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バラ、それぞれのインプレッション

Elegant_2

花を見た瞬間にシックとかエレガントという言葉がすぐに浮かぶのは

赤いバラだけ。赤で連想するのは舞踏会の手帖、シャネルの口紅、

パリの女の子が肩にかけた小さなショルダーバッグ、インゲボルグを

着た金子ユリの赤い唇。

Elegant_01

この咲き方に限って言うなら、女優で言うとジュリエット・ビノシュ。

充分に知的であって、清楚でもありながら、どこか奔放でいけないと

ころがある。映画『ダメージ』のなかで白昼、逆光のまばゆい光のな

かで全身を紅潮させていたビノシュ。

Matilda_04_2_1 

女子高のクラスの中にかならず1人くらいはいた。

彼女のことは理解できないけれど、ちょっとエキゾチックなルックス

で、独特な光彩を放って魅力的だった女(ひと)。

Archiduc_joseph_04

私がこのバラから感じるのはいつも、包み込まれるような優しい愛情

だけだ。全てを包み込んでなお輝くような純白のまま。

このバラには悪いところが何もない。

ただちょっと病気に弱いことをぬかしては。

Gramis

るる。喜びに心弾ませてステップする少女。

京成ローズの今年の新作。

彼女は最近、我が家に来て、近いうちに友人のところにゆく。

今週末の友人の誕生日のために。

彼女は私には元気すぎて。

Ruru

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2006年10月11日 (水)

Time After Time

Duchesse_de_brabant_01jpg

Time after time

I said myself that I'm

So lucky to be lovin' you

So lucky to be

The one you run to see

In the evening when the day

through


I only know

That I know

The passing years will show

You've kept my love

So young, so new


And time after time

You'll hear me say that I'm

So lucky to be lovin' you


(Jule Styne / Sammy Cahn)

****************************************************

今日に日付が変わった後でポスティングを終えて、キッチンで食器を

洗っていたら、何故か突然『Time After Time』が聴きたくなって、CD

をかけた。1人のいいところは夜中の1時半に音楽が聴きたくなって

CDをかけても、珈琲をたてても、誰にもなんにも言われないところ。

逆に言えば、いいところはそれくらいだけど。

今はもういい歳になったミュージシャン達の憧れだったフランク・シナト

ラの、代表曲のひとつである『Time After Time』。私が良く知ってい

るのはチェット・ベイカーの歌ったのだけれど、今はもう私の手もとに

はない。私は貧乏人の癖して、気に入った人には気前良くなんでも

あげちゃうから、いつかライブの帰りにJが「ああ、無性にチェット・ベ

イカーが聴きたい!」と言ったときにあげてしまったんだ。いま、私の

ところにあるのはイヴァン・リンスの歌う『Time After Time』。

彼の歌うこの曲は、なんというか、とっても甘い。嘘じゃない幸福感に

満ちていて、彼の呼吸で部屋の空気が暖められてゆくようだ ・・・

きっと妻ヴァレリアのことでも思いながら歌っているんでしょう。

   君を愛する僕は なんてラッキーなんだろう

   一日が終る夕暮れ時に 

   君が急ぎ足で会いに来るのは この僕なんだ

   歳月を経て見えてくる

   君への想いは変わらない

   いつまでも新鮮なまま

こんな風に言ってもらえる女性こそ、私はラッキーだと思うわ。

しあわせな1曲。

歳月を経て愛されるバラと共に。

Sakurakagami

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秋のティーローズ

Lady_3_1

私にとってはティーローズの代表格のようなレディ・ヒリンドン。

広い薔薇園のたくさんの薔薇のなかで、ひときわ独特な雰囲気と香

りで、異彩を放っていた。うつむき加減の蝋のような細長いつぼみと

深い紅茶の香り。初冬には白に近いまでに淡くなる、アプリコットの

混ざった黄色の花。

秋のこの薔薇は、端正と言うのを通り越して、妖しいまでの美しさ。

Shadow_of_your_smile_1

そして窓辺に一輪飾ったこの花に、私はタイトルをつけた。

The shadow of your smile.

どこかアンニュイな横顔。

ティーンエイジャーの時にアルバイトしていた職場には、素敵な大人

の男の人がたくさんいて、明日20歳の誕生日だと言ったら、その頃

ジャズが好きだった私のために、1人の男(ひと)がピアノバーに連れ

て行ってくれた。グランドピアノの近くに座って、「君も何か好きな曲を

リクエストしたら」と言われて、照れる私に、「明日の君の誕生日のた

めに」と言って、その人がリクエストしてくれたのが

The shadow of your smile.

映画と映画音楽好きだった父を持つ私には聴き慣れたメロディー。

そのとき19の私にはまだ翳なんてなかったはずなのに、なぜこの曲

だったんだろうって思う。

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2006年10月10日 (火)

この時期、素麺を食す。

Soumen_02

今の時期、昼間はまだ夏日のように暑かったり、かと思うと長袖Tシ

ャツでも寒かったりと、日によって気温の寒暖差が激しい頃。

今日はどこの家ににでも残っていそうな素麺を使って三品。

まず最初の素麺は以前に『凛のほにゃらかな毎日』で紹介されてい

た『豚しゃぶ味噌だれそうめん』。私も作ってみました。以下レシピ。

* みそだれは味噌大匙1を、めんつゆ+水(1:1)1Cupでのばして

  生姜のすりおろし、すりゴマを加えて作っておく。

* しゃぶしゃぶ用の豚肉を、お酒とお塩入りの熱湯でさっと茹でて水

  を切っておく。

* 斜め切りしたきゅうりと、青紫蘇・みょうがの千切りを用意し、豚肉

  と一緒に味噌だれで和える。

* 茹で上がったそうめんの水気をしっかり切って盛りつけし、七味を

  ふってできあがり!

ちなみにレシピ通りだと気持ちしょっぱい感じがしたので、私はお味

噌の量を減らしてみました。すりゴマは多い方が香ばしくておいし

い。今日みたいな暑い日のお昼にはまだいける!

Soumen_03

今日はお陽さまが翳って冷たいものはちょっと食べたくないなあ ・・・

というときは、『そうめんチャンプルー』なんていかがでしょう。

 < 材料 > 2人分

   そうめん  2束   高菜、野沢菜 2~3束

   木綿豆腐   1丁       卵   1個

   にんにく・しょうが  適量   鷹の爪 ひとつ

   ゴマ油 コショウ 酒 大匙1

* そうめんは硬めに茹でる

* 豆腐は水切りして手で粗くくずす。

* にんにく、しょうがはみじん切り、鷹の爪は小口切りにする。

*  高菜もざく切りにしておく。

* フライパンにゴマ油を熱して、にんにく、しょうがを炒め、香りが立っ

  たら、高菜、豆腐、そうめんの順に加えて炒める。

* 卵を割りほぐして上のフライパンの中に入れ、手早くからめてから

  酒をふり、塩・こしょうで味を調える。

高菜の塩味と鷹の爪のぴり辛が食欲をそそる味。自分の好みでもう

少し味に工夫を加えても。

 Nyumen_01

そして、今日は肌寒いからあったかいものが食べたいなあ、というと

きには、超簡単にゅう麺を。

 < 材料 > 1人分

   そうめん 1束     ニラ  1/2束

   中華スープの素    小さじ2

   卵     1個     水   800cc

 * そうめんは硬めに茹でて水気を切って器に盛っておく。

 * お湯が沸いたら中華スープの素を入れる。

 * ニラを適当な大きさに切って入れ、溶き卵を入れて、はじめに  

    用意したそうめんにかけるだけ! 

これもレシピ通りだとかなりあっさりした味なので、少し味に工夫を

しても良いと思う。私はここにお醤油を足して、ゴマをふりました。

以上3つのレシピで食べるそうめん。

ちょっとアップの時期が遅れてしまったけれど、なかなかに使える

そうめん。にゅうめんなんかはベトナムのフォーみたいにしてもいけ

ると思う。(『あたしベイベー』さんのところでは、カレーそうめんなる

ものを食していた!) 

私はいつも、いただきものの素麺を大量に残してしまうのだけれど、

(1年くらいは充分にもつみたいですが、やっぱり新鮮な方がおいし

いってことで)、今年は食べ方を工夫することで、なんとひと箱ぜんぶ

完食しました。日本の優れたファストフードと呼んでもいいような乾麺

は、本当に便利。なんたってすぐにできる、材料費がかからない! 

1人用のお昼や夜食、休日の簡単ランチにいかがでしょう?

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2006年10月 9日 (月)

実りの季節

Rose_hip_1

今日の午後、昨日お電話をいただいていた交野市にお住まいのブロ

ガー、『つるバラの庭』のみちこさんから、ご自宅のお庭に生った柿と

ともに、ローズヒップが届きました。

箱を開けると、こんなに ・・・ と思うほど、実をつけたコンプリカータの

枝が。バラの枝も葉もローズヒップも、採取したままの自然の色。

それから小さなビニール袋に小分けされたのがいくつか。

こんな風に丁寧なメモがついてました。下は上と同じコンプリカータ。

Rose_hip_06

アンジェラ。

Rose_hip_01_1

エクスプロア。

Rose_hip_03

そして、ヨーク&ランカスター。

Rose_hip_04_1

最後は、ロサ・ラクサ。

Rose_hip_05

こうやって見ると、バラによってローズヒップの色も形もいろいろなの

がよくわかる。そして、どれも花同様に個性的でかわいらしい。

これをどうするのかというと、もうご存知の方も多いと思うけれど、ほ

ぐして中に入っている種を取り出して、その種を撒くのです。

それを実生(みしょう)と言って、普通に芽継ぎや切り継ぎで作られた

バラの花には花形も花の大きさも遥かに劣るけれど、実生から生ま

れたバラにも実生だけが持つ素朴で自然な味わいがあるものです。

ただし、小さな種から双葉が出て本葉が出て花をつけるまでにはか

なりの時間がかかる。11月に種を撒いて、うまくいったとして来年の

3月。それから花が咲くのは、早いもので発芽から6ヵ月後。でも発

芽までにもっとかかるものもあるし、オールドローズになると花が咲く

までに3年もかかるものもあるそうです。とっても気の長い話 ・・・

さて、はたして私はそれだけ待てるでしょうか。

とりあえずやってみよう!(^-^)

はるばる交野市からたくさんの柿とローズヒップを送ってくださった

みちこさん、ほんとにどうもありがとう! 感謝です。

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ケイトウ

Keito_01_2 

今日はこの3連休の中でも最高に気持ちのいい秋晴れ。

私はこんな日にテニスコートでテニスしている人が心底うらやましい。

去年、秋の晴れた日に思い立って母のお墓参りに行った電車の中で

「テニスコートに咲いてるケイトウ」と言って画像付きのメールをもらっ

たのは、ちょうど今頃じゃなかったっけ。1年が経つのは本当に早い。

秋も終わる頃に植物園にバラを見に行って、その日は三脚なんか持

って行って、めずらしくツーショット写真を撮ったりしたのに、薄曇りで

私のデジタルカメラのピントは全然合わず、結局うまくいかなくて残念

がる私に、「写真なんていつでも撮れるさ」とあなたは言ったけど、

ほらね、やっぱりそうそう、そんなチャンスはこないんだから。

そんなことを思ってたら、さっき自転車で買い物に行く途中に、雑貨

屋の前でカラフルなケイトウを見つけて、それで思わず買ってしまっ

たというわけ。

Keito_2_1

Keito_02

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2006年10月 8日 (日)

昨日のおみやげ

Jewel_night_01

さて、今日もサウダーヂな時間、今日という日もそろそろ暮れてきま

した。今日、横浜に行ってるMは楽しんでる頃かな?

今日、電話で元気な声を聞かせてくれたMさん、どうもありがとう!

何よりの贈り物でした。

最後の画像は昨日の横浜のおみやげ、大さん橋のデッキの上から

見た、横浜みなとみらいの100万ドルの夜景です。

まさに宝石箱をひっくり返したような、キラキラの夜景☆

昨日の夜は夏の終わりみたいに夜風が暖かく、とても気持ちよくて、

デッキの上にはぱらぱらと夜景を眺める恋人たちの姿も。お台場み

たいに混んでないから、寒くなる前のデートスポットにはお勧めかも。

私もこんどぜひ ・・・・・・ (^-^)

Jewel_night_04

Jewel_night

Jewel_night_02

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横浜ジャズプロムナードに行って来た!

Dolphy_2

今日も翠ちゃんは今頃ル・タン・ペルデュで歌っている真っ最中だろ

うと思う。

昨日、11時半ころ横浜関内に着いた私は、まず関内小ホールで

12時スタートの金子晴美+吉岡秀晃トリオを聴いた。

もうベテランの金子晴美さんのヴォーカルは余裕の貫禄そのものだ

ったけれど、それより何より吉岡秀晃さんのプレイがメチャメチャ面

白くて楽しかった。何しろこの人、ものすごく表情が豊か! よく動く!

見ているだけでこんなに面白いジャズピアニストは初めて。ふつうス

テージ真ん中にヴォーカリストが出てきたらそちらに注目してしまうと

ころだけど、私はライブの間、終始彼に釘付けになっていた。これだ

と下手なヴォーカリストは彼に食われちゃうかもしれないな。私が映

画監督だったら彼を起用してフィルムを撮りたいと思うくらい。絵にな

るジャズピアニストです。プレイ自体はもうファンキーでスィングそのも

の。最初から最後までパワー全開! 吉岡秀晃さんのホームページ

を探して見たら、セカンドアルバムでスイングジャ-ナル選定ゴ-ルド

ディスクを邦人ジャズメンとしては史上初の獲得、とあったからすごい

人なんだと思う。今後ちょっと注目したいピアニストです。ライブの雰

囲気を垣間見たいという方はここを見てください。 ↓

                  吉岡秀晃 with 多田誠司@NARU

金子晴美さんのほうは『Peel Me A Grape』(葡萄むいてちょうだい)

という曲が彼女の声に合っていてとても良くて、大人の夜の雰囲気。

ブランデー入りのダークチョコレートだな、と思ったら酔ってしまった。

それが終わりから数えて3曲目のこと。いつも思うけれど、つくづく選

曲って大事。

そして午後は、横浜は野毛にあるドルフィーへ翠ちゃんを聴きに。

なんたってこの日の始まりは午後3時。まだお天道様は高いし、翠ち

ゃんはいつもならやっと起きて珈琲飲んでるくらいの時間? 最初の

ステージはまだ声が出てない感じ。たぶんそうとう健康な(?)私に

は、昼の3時に締め切った暗いジャズバーはちょっと息苦しくもあり。

昼間、清水翠の声を聴くのなら、光と風の気持ちいいオープンカフェ

か、屋外ステージがいいなあ、などと思ったりして。

でも、ここドルフィーは翠ちゃんにとってはホームベースとも言うべき、

勝手知ったるライブバー。この日も歌いなれた、『バラに降る雨』、

『Over Joyed』、『Bluesette』、『エスターテ』、『Blame it On My

Youth』、『バーボン・ストリート』、『Moon Dance』などのレパートリー

を軽快に、時にしっとりと歌っておりました。

暗いジャズバーでノンフラッシュで写真を撮るのは難しく、下は数枚

撮ったうち、かろうじてなんとか雰囲気がわかるかな、という1枚。

昨日のドルフィーで歌う清水翠です。

Jazzprodolphy

そして、ここでお知らせです。

ジャズを歌うようになる前は、もともとロックバンドで歌っていたと

いう翠さん。その昔、巷を轟かせた伝説のロック・バンド(?!)が

来月19日、ドルフィーで復活します。その名もふざけたような、も

といレトロな『本牧の恋』。夏の終わりに一緒に海に行った例の口

の悪いドラマーも出演します。(このチラシは彼の妻からもらいまし

た)。当日は60年代から70年代のロック、ポップスを中心にライ

ブをするそうです。このブログを読んでいる方々にもちょうどマッチ

する年代の音楽じゃないかと思います。

ひと月以上も前の告知なので、ぜひぜひふるってご参加ください。

ちなみに横浜野毛町は、ちょっと横浜とは思えないディープなとこ

ろ。大阪育ちの清水翠が、最も大阪難波に似ているという町。

ディープ好きのあなた(そうそう、そこの杉並のMさんですよ!)、

ぜひ一度お越しください。

Live_2   

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10月8日の空

Blue_sky

今日も台風一過の青空と言っていいのかな。

昨日に引き続き、ちょっとクレイジーなくらいの青空。

風は唸りをあげて吹きまくっている。

陽射しは痛いくらいに強い!

おとといの台風の日はあまりの寒さに思わずカシミヤのセーターを引

っぱり出してしまった私としては、???という感じ。

昨日は3時間ちょっとしか眠らずに息子のスクールのために6時起き

して、私は横浜ジャズプロムナードへ。睡眠不足と疲れと体調不良で

もう駄目かもと思いながら出かけたのに、結局1日中歩き回ってしま

った。横浜は広い! 広すぎる! 

さすがに11時過ぎに家に帰り着く頃にはもう、へとへと。 

今朝はすっかり寝坊して起きたらこの天気で、少々しおれたバラに

水をやって、家中の布団を干して、シーツを洗って、いまバスタブに

お湯を張っているところ。変な時間にお風呂に入ったりできるのも、

休日のいいところ。今日は連休の中日。

お風呂に入ってすっきりしたら昨日の記事をぼちぼちアップしようと

思います。本日リアルタイムで。

皆さまも良い連休を!

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2006年10月 6日 (金)

ブルーにならないで

Rainyday_2_2 

Don't Be Blue


Don't be blue you ain't got far to go.

You see better when you're movin' slow.

   Don't get locked into your sadness:

   Cop a bluff... 

   Strut your stuff.


If you stumble just be tonque-in-cheek.

Love is always just like hide-and-seek.


Antony and Cleopatra did it too...

So don't, Just don't be blue.


    If this high-speed hassle gets you down

    Remember,

    Everyone is lost until they're found.


Don't be blue the sun is bound to shine.

After winter comes the summertime.


   Don't get locked into your sadness:

   Cop a bluff...

   Strut your stuff.


If you stumble just be tonque-in-cheek.

Love is always just like hide-and-seek.

Romeo and Juliet did it too

So don't, no don't be blue, just don't be blue.


( Written by Michael Franks )

****************************************************

今でもときどきラジオからマイケル・フランクスの古い歌が流れ出すと

懐かしく耳を傾けてしまう。これは昔、大好きだった歌だ。

ちょっとブルーなとき、自分を励ますためにこの歌を歌ってみる。口笛

で吹く。頭のスピーカーに流す。街を歩きながら。

すると思わず足取りも軽快になって、今日みたいな雨の日だって苦じ

ゃなくなってしまう。少しは。誰かにジロジロ見られたって平気。

昨日、土砂降りの街の中を歩いていたら、この歌が口をついて出た。

女の人はいつもゆったりしてるほうが素敵に決まってる。でもそれは

男だって同じじゃないの? ん、違うな。いつも大人の余裕でゆったり

かまえてる人が、ちょっと慌てたり、妙に真摯な態度だったりすると、

私は愛しさが増してしまう。まあ、そんな個人的な趣味は別として。 

  ブルーにならないで

  恋なんていつもかくれんぼの様なものなんだから

  ロミオとジュリエットだってそうだったのさ

なんていう詩もとてもかわいらしい。

そうね。外がひどい雨でも、メールのレスポンスが少々(とても)遅く

ても、ブルーになるのはやめましょう。冬の次は夏なんだから ・・・

****************************************************

『Don't be blue』はこのCDの5曲目に入ってる。

『Sleeping Gypsy』。マイケル・フランクスの初期の名作。

ここではラリー・カールトンもウィルトン・フェルダーもジョー・サンプルも

デヴィッド・サンボーンもいっぺんに聴ける。

いま私がこれだけブラジル音楽に惹かれるルーツはここか、と思う。

ちょっといまブルーかな、というときに聴いてみることをお勧めします。

思いっきり気取って、小粋に街を歩きたくなるかも。

Sleeping_gypsy_1

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2006年10月 5日 (木)

RED BIRD

Red_bird_02

君は憂いを含んで赤く結実する果実

沈黙を解き放つように

僕は窓を開ける

窓の外は10月の冷たい雨

****************************************************

赤い鳥、という名前と色に惹かれて洋ナシを買った。

最近、畑でカラフルな野菜やフルーツを育てている人が増えたよう

だ。先日、なんの気なしに見ていたTVで、KINO CAFE という有機

栽培農場を知った。若い女の子がひとりでやっている。

ユニークな色と形の野菜であふれる彼女の畑は、恋する彼女の心

と同じようにカラフル。

****************************************************

追記:

コメント欄に「赤い洋ナシってどんな味?」というご質問があったの

で、追記します。赤い洋ナシも皮を剥いてしまえば、ほらこの通り、

中身は普通の洋ナシとおんなじです。上の写真で見てもわかるよう

に、ちょっと傷んでいたし値段も安かったので、お味の方はあまり期

待していなかったのだけれど、なんと意外にも甘くておいしかった! 

洋ナシもハズレると硬かったり、舌触りがざらざらしたりするけれど、

これは熟していてクリーミー。香りもなかなか良かったです。

赤い洋ナシを見つけたら、お試しあれ!

Younashi

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2006年10月 4日 (水)

万年筆と古い夢

Shosaikan

また広島からTがやって来た。

今回はひと月も前にスケジュールを知らせる電話をしてきたから、何

かなと思ったら、「行きたいところがあるんだ」と言う。

彼は父親の後を継いで税理士事務所を経営しているだけではなく、

有能なメンバーによって結成された企業再生のためのコンサルティン

グチーム及びNPOに所属していて、その勉強会で東京における興味

深いある成功例を見せてもらったのだという。東京でショップを成功さ

せるには良い立地条件と過剰接客しないこと、というのが一般論らし

いが、その店は全くその逆を行っていて、普通に歩いていたんでは

見つからない隠れ家みたいなところにあって、実に手厚い接客を身

上としているのだそうだ。そのコンサルタントはそれまで万年筆にな

んて全く興味もなければ欲しいと思ったこともなかったのに、たまたま

見に行ったその店で手厚い説明をされるうちに、どうしても欲しくなっ

てしまい、なんと1本、数十万円もする万年筆を買ってしまったばかり

か、それ以降も折あれば通って、さらにもう1本買ってしまったという。

つまり、まったく欲しいと思っていなかった客にそこまで欲しいと思わ

せる何かがこの店にはあるわけで、それは何か? というところが、

そのコンサルタントが話した論旨らしい。Tも彼が実際に買った素晴

らしい万年筆を見せてもらいながら話を聴くうちに興味が湧いてきて、

東京に行く機会があったら経営的な見地からもぜひ行ってみたいと

思ったのだそうだ。「いいね。面白そうじゃない。行こうよ」

そんなわけで昨日の夕方、南青山にある『書斎館』を見に行った。

Tから聴いた話では、私は昔ながらの古風な高級文房具屋のイメー

ジをしていたのだけれど、とんでもない、ぱっと見るからにいかにも南

青山、という感じのデザイナー建築のスタイリッシュな店。

Shosaikan_01

石のステップを上がると照明を落とした薄暗いショップに続く左の壁

面には、犬や猫のアンティークの銀の置き物がディスプレイされてい

る。それを見ただけでも上質のセンスが伺える。正面にはアンティー

クの雰囲気のあるピアノ。(古いスタインウェイらしいが、調律もして

あって実際に弾けるのは、このモデルでは世界にこのひとつだけと

いうことだった。)その後ろがガラスのショーケースで、趣味の良い

骨董品に混じってアンティークの万年筆やインク瓶などが抑えた照

明のなかでスポットライトを浴びている、万年筆による筆跡の、武者

小路実篤の直筆原稿も飾ってあった。

そして右手が段差があって少し下がった部屋いっぱいに広がる、世

界のトップブランドの現代モデルの万年筆とボールペンのショーケー

ス。ひとくちに万年筆と言っても、長さや太さ、材質からデザインまで

これほどまでに種類があるとは。こんなにたくさんの万年筆を一度に

見たのは初めて。音楽家や作家や芸術家、果てはマリリン・モンロー

やリンカーンやアインシュタイン(のDNAが埋め込まれた)モデルま

であって、限定品で完売した後はプレミアムが付くという。これはハ

マったらはまるかもしれないな。私はモンテグラッパというイタリアの

ブランドの万年筆の美しさにとても惹かれたが、それはまさしくペンと

いうよりライティングジュエル、筆記具の宝石とも言うべきものだと店

の女性が説明してくれた。下手なアクセサリーなんかを買ったりもら

ったりするよりずっといいかもしれない。

店には私たちしかいなくて、感じの良い女性がずっと付かず離れず

に説明してくれた。この店は、ここで懐かしい時間を過ごして欲しい

というオーナーのコンセプトに添って作られたそうで、私が万年筆の

種類の多さ以上に感心した骨董品のコレクションは、実際それを集

めるためにオープン時期が遅れてしまったほどのこだわりを持って

集められたものだそうだ。入ってすぐのアンティークのスタインウェイ

に始まり、そのコレクションだけで億単位のお金がかかっていると思

われる。文字通り、ここは机周りの道具のミュージアムなのだった。

そして、万年筆自体はペン先を交換したりインクを補充したり手間の

かかるものだけれど、いまの作業効率重視、機能性優先の殺伐とし

た時代にあって、ひとつの良い道具を手間暇かけて愛用することで

特別な愛着が湧き、書くこと自体が好きになる。それこそ本当の意

味で贅沢なスローライフではないか、ということであった。

私も子供の頃は万年筆に憧れた。

古い映画の中でよく使われる、羽ペンで手紙を書くのにも憧れたけれ

ど、文豪が使っている、いかにも重厚なデザインのモンブラン。

いつか特注にオーダーした自分専用の原稿用紙に、愛用の太字の

万年筆で趣のある書体で原稿を書く、というのは文章を書く人なら誰

でも1度は憧れる夢じゃないだろうか。かくいう私もその1人だった。

ここに来て、そんな古い夢を思い出すとは。

実際のところは、叔父が定年までパイロット社に勤めていたから、入

学祝などで何度かちょっと高級な自分のイニシャル入りの万年筆と

ボールペンとシャープペンシルのセットをもらったりして、そのたび何

度も万年筆で書くことを試してみたけれど、私は持ち方が悪いのか書

き方が悪いのか、いつも指も紙も汚してしまってうまく書けないので、

そのうち諦めてしまった。その後、仕事柄ときどき職場で作家の書い

た生原稿を目にすることができるようになると、作家の誰もが必ずしも

万年筆を使って書いているわけじゃないということがわかった。万年

筆が苦手なだけじゃなくて、原稿用紙の升目に字を埋めること自体

ができない作家もいた。私と同じ筆記具を愛用している人が何人も

いることも知った。私が昔からずっと変わらずに愛用している筆記具。

さて、なんでしょう?

それはどこででも買える100円のぺんてるペンです。

いまでも時々思い出すと、まとめ買いして引き出しに突っ込んでおく。

無いと困る。世界で1番好きな筆記具。

話が横道にそれたけれど、そんな風で万年筆で書くことができない

私と、同じく万年筆が使えないTが、いくら素晴らしい万年筆を使って

いても、肝心の字がお粗末だったら返って恥ずかしいんじゃないかと

言うのに対して、その女性は、「別に字の下手うまは関係ないんです

下手でもその人らしい味のある字が書けるのが万年筆なんです」

と言ってくれた。実際、書斎館にある書棚に置いてあった本の中の、

万年筆を愛用する著名人達の字を見てみたが、みんなたいして達筆

ではなく、どちらかというと癖のある下手っぴな字が多かった。でも確

かに手書きの文字は味がある。すっかりメールとワープロのお陰で手

紙どころか字そのものを書かなくなった(書けなくなった)私だけれど

お気に入りの万年筆を奮発して1本手に入れて、字を書くことを始め

るのも良いかもな。さんざん説明してもらって帰る頃には、すっかりそ

んな気分になっていた。店の中には数十万もするような手の届かな

い超高級品ばかりではなく、数千円で買えるとても美しいボールペン

から、私でも手の届く万年筆も置いてあった。

ふぅん、なるほどね。こういうことか。

書斎館の素敵なホームページを見て気になった方は、南青山にお越

しの際はぜひ立ち寄ってみてください。ミュージアムとしてただ眺める

だけでも、懐かしい時間を過ごせるかも。

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2006年10月 3日 (火)

PRAYER

Prayer_1

夕暮れの光が溶けて消えないうちに

あなたの名前を呼んでみる

ゆれうごく街 ひとりたたずんでいる時

あなたのことを 思ってる


時を越え 空を越え たどりつくから

降りつもる悲しみに 負けることなく


私の目が閉じられてゆく時が来ても

あなたの声も 指先も 心も

愛に包まれているように


時を越え 空を越え たどりつくから

降りつもる悲しみに 負けることなく


祈ることだけ

今 強く願うことだけ

あなたが 今日も 明日も いつまでも

愛に包まれているように


(作詞・歌:矢野顕子 / 作曲:Pat Metheny )

***************************************************

人が人にしてあげられることなんて、ほんのわずかしかないとして

誰かのために祈ることは、とても自然なことだと思う。

遠く離れた人を思うとき、もう自分はなす術を持たないと思うとき、

人は宗教のあるなしに関係なく祈る。

いま、きれいごとでもなんでもなく心底思う。

あなたが、今日も明日も元気で、しあわせでありますように。


この曲は、昨日ご紹介した矢野顕子の『Super Folk Song』の

ラストに入っている曲。

いつ聴いても穏やかな優しい気持ちになれる。

矢野顕子のこの曲のコメントにはこんな風に書いてある。

 ある日PAT METHENY と電話で話していた時、

 「ねえ、ぜひきいてほしい曲があるんだ。だって君の歌をきいて

 いたらできた歌なんだもん。」

 というので私にくれたのがこの曲。

 スタジオのスピーカーからとうとうと流れてきたこのメロディをきく

 と同時に、私の身体中の骨が溶け出したかのように思えました。

 あぁ幸せ。

まさに歌い手冥利!

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おはよう!

Tsubomi_3

雨で始まった10月だけれど、それも昨日で終わり。

今朝は雨も上がって、空が明るくなってきた。

今日一日を、バラのつぼみのように始めよう。

Tsubomi_01

Tsubomi_02

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2006年10月 2日 (月)

ブレイブなあっこちゃん。

Akiko_yano_2   

矢野顕子の歌にはどれだけ力をもらったかわからない。

秋から冬へと向かう心細い夕暮れを、保育園帰りの小さな子供を自

転車の後ろに乗せて走り出すと、向かい風は冷たく、子供が歌う童

謡は頼りなくあどけなく切なくって、ひとり泣きそうになりながら、心に

は矢野顕子の歌う『愛について』があった。その頃の私にはもうぴっ

たりすぎるほどぴったりなシチュエイションの歌。

でも若い頃の私は矢野顕子が好きじゃなかった。彼女のファンキー

な高い声がまず好きじゃなかったし、たまにTVで見る彼女の顔はど

こか大屋政子にも通じるおてもやん顔(失礼)で好きじゃなかったし、

それに民謡と歌謡曲をアレンジした彼女のアプローチはポップだけ

れどアバンギャルド過ぎて、もっとクールでかっこいい洋楽が好きだ

った当時の私にはついていけなかった。

私が矢野顕子を好きになったのは、もう今の生活になってから、30

を過ぎてからのことで、『Super Folk Song』と『Piano Nightly』という2

枚のアルバムからだった。どちらも矢野顕子の選曲による、ほとんど

他のミュージシャンの曲をカバーしたもので、彼女がピアノ1本で弾き

語りしているシンプルにして、まるで短編小説を読むように深遠なア

ルバム。これを聴くと矢野顕子のヴォーカリストとしての力はもちろん

のこと、ピアニストとしての才能にあらためて驚かされるし、また魅了

される。ティーンエイジャーの頃から数々の伝説を持ち、天才の名を

轟かせ、あの坂本教授をして、「僕が矢野顕子に勝てるものは学歴

だけ」と言わしめたのも深く頷けるというものだ。彼女が選曲したのは

彼女に縁が深く、もう何百回となく歌って血となり肉となったような

歌。シュールだったりコミカルだったりする曲もあるけれど、かならず

しも明るい曲ばかりではなく、どちらかというとけっこうヘヴィな心象風

景を歌ったものも多くて、独りで聴いているとしみじみと心に響くよう

なものが多い。けれど矢野顕子は暗い歌を歌っても暗くなりすぎな

い。むしろ透明な哀しみをまとって凛とした強さを感じさせる。

私が彼女の歌から感じるのは圧倒的な個の感覚だ。孤高と言って

もよいかもしれない。ピアノに向かう矢野顕子は、そこだけ光を集め

て、あとは断崖。誰もそこには入ってゆけない、ひとつ間違ったら落

ちてしまいそうな暗闇に、光を投げかけんと独りで立ち向かってゆく

勇敢な人。そしてそれをもっとも端的に的確に言い表そうとすると、

こんな言葉がちょうどぴったりする。もともと矢野顕子は若い頃から

糸井重里と仕事をしてきて、公私ともに親交の深い人だけれど、そ

の糸井重里氏のHP『ほぼ日刊イトイ新聞』をクリックしたときに一瞬

出る言葉、一瞬出るだけで何故かホッとなごんでしまう言葉。

『ONLY IS NOT LONELY』

そう、1人はひとりぼっちじゃない。1人でいることは孤独じゃない。

矢野顕子の歌はそんな風に言ってくれる。

****************************************************

最初のジャケットは『Super Folk Song 』。

そして、これは『Piano Nightly 』。

彼女のピアノの弾き語りはまるで現代詩を朗読するようなテイスト。

私は詩の朗読は嫌いだけれど、彼女の歌みたいだったらいいなと思

う。ライナーノーツには曲ごとに矢野顕子によるコメントが付いてい

て、いちいちここに紹介してしまいたいくらい気が利いていて楽しく、

深い。ピアノ弾き語りカバー・アルバムには、この他に

Home Girl Journey 』と、もっとも最近リリースされた

はじめてのやのあきこ』があって、こちらでは、井上陽水、忌野清

志朗、小田和正、槙原敬之など豪華ゲスト陣とデュエットして話題

になったけれど、私はこの最初の2枚が好きだ。

Akiko_yano_01_1   

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2006年10月 1日 (日)

新しい月

77s_1

8月に抱いてた淡い期待は夢と消え

9月は思いも伝わらぬまま

9月最後の昨日は

久しぶりに美容院に行って髪を切った

今日、初めてつかうオーデコロンの封を切った

もうしばらくしたら髪の色を明るくしよう

旅に行こう

それが小さな旅でも

見知らぬ土地で見知らぬ景色を見て

見知らぬ人たちと会おう

10月はあたらしい月。

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