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2006年6月 8日 (木)

梅雨まで

Tsuyumade

庭の草をむしる

ハハコグサやハルジョオンは

すぐ根っこまで抜けて

乾いた土がはらはらこぼれるが

オオバコは

二葉からまだ間もないのに

シャベルで深く掘らないと

根ごととれない


帽子をかぶるのを忘れていた

五月の太陽が

髪を熱くしているのに気づいたのは

イブキ、マサキ、ツバキ

シダレヤナギ、アジサイなどが

込みあっている日陰に

うずくまったときだった

頭を動かしたらじぶんの髪が

日なた臭くにおったのだ


貧弱な葉のくせに

根が針金のように強く

どこまで掘ってもきりのない草の名は

知らない

ところどころ

親指大のコブまでついている


草をむしっていると

心しずかに

じぶんが偏執狂ではないかと疑うことがある

ミミズがのたくっている

ずいぶんたくさんいる

指につまんでみる

この虫を

研究してる人もいるんだなと思う


草は

必ず根っこまでとるべし


夏には

大きな麦藁帽子をかぶる


(北村太郎/詩集『あかつき闇』から『梅雨まで』)

*************************************************

17歳のときにたまたま新聞の文芸欄で見た、このとりたてて何とい

うこともない詩が心にとまって新聞の切り抜きをして以来、もう十数

年になる。その間、私は飽きることなく北村太郎の詩を愛してきた。

アルコールを飲まない人にとって、アルコールがまったく興味のない

ものであるのと同じように、詩を解さない人にとっては詩なんてほと

んど興味の外にあって、わけがわからない上にどこか非現実的な

だけなのかもしれないが、物心ついて以来、私にとってはなくてはな

らないものだ。日常的な言葉では足りないし、詩以外の他の文学の

言葉でさえ足りない。雑誌やインターネットで見る言葉、人の書いた

論文やメール、自分の書く挨拶文や説明文や企画書やここで書く言

葉、なんかだけで日常をずっとやっていると、私はしばらく野菜を食

べていなかった人が無性に野菜を欲するように、飢えてきてしまう。

確かに詩の言葉でなくてはならない何かがあるのだが、それが何な

のか、どうしてそれじゃないと駄目なのかはわからない。

ただ、詩の言葉だけが一瞬にして見せてくれる風景があり、私はそ

のなかにいるのが好きなのだ。それはたとえばこの詩にしても、いま

読んでも昔と変わらぬものを私にもたらしてくれる。

私は滅多に好きにならないから、いったん好きになるとそれは半端

じゃなく、かつて私の伴侶だった人に、「君が人を、人が作ったもの

を、そこまで愛せるのはすごい。そこまで愛せたら本望だろうな」と

言われたことがあるけれど、はたして呆れていたのかどうか。

言葉は時折り気紛れに私の上にも降りてくる。こんなに好きなのだか

ら、願わくは死ぬまでに詩のミューズが私に微笑んでくれんことを。

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日常のなかの詩/詩のある日常」カテゴリの記事

コメント

こんばんわ。久しぶりのコメントです。
こちら、今日から梅雨に入りました。いまは
雨音が聞こえてないようですが
午後からずっと雨が降っていました。
今日の午前中、秋吉台に行って来ました。
久しぶりに行ったんですが、念願のウグイスやホオアカと出会えました。朝早くから行った甲斐がありました。
梅雨に入り、しばらくは小鳥ちゃんの追いかけが出来ないかも知れないのが残念です。

久しぶりの北村太郎さんの詩ですね。
最初読んでいたとき、soukichi さんの文かなと思いながら拝読していました!

投稿: うー | 2006年6月 8日 (木) 22:02

確かに、詩となるとわたしも特に関心があるわけじゃない。私にとっては小説がそうきちさんのそれかも・・・好きな作品は何回でも読める。それが推理小説であっても・・・池波正太郎を筆頭に 今は時代物。
だから対象は違うけど感覚はとてもよく理解できます。
でも、この今日の詩はなんかいい!!
詩とは気づかなかった。そうきちさんの呟きだと思った。だって今日草をむしりながらそっくりそのような想いを抱いていたから・・・。
そうきちさんの周りのガーデニング好きさんたちもきっと同じような想いを抱いたことがあるに違いない。
心のまたはなんでもない一こまのつぶやきは、
なんか・・いい!!

そうそう、きれいに開いたよ、八重咲のチューりップ。

投稿: lehto | 2006年6月 8日 (木) 22:24

うーさん、
私、昨日うーさんのこと思い出してましたよ。
なぜかというと昨日の夕方、近くでカッコーが鳴いていたのです。
カッコーの声っていいよね。なんかのどかで。高原かなんかにいるみたいで。
子供は誰かがカッコー笛でも吹いてるんじゃなのと言っていたけど、あれは本物でした。
でも声は聞けどもまだ本物のカッコーってどんな鳥か見たこと無いんだよね。
うーさんは見たことある?

投稿: soukichi | 2006年6月 8日 (木) 22:26

ああ、lehto さん、
私はちょっとお疲れモード。
このところちょっと仕事抱えててさ。
ちょいとストレスもあって胃にきちまって、おとといは胃に優しいものと思っておうどんにしたんだが、席について七味とうがらしをかけてひと口食べて「?!」 ・・・・・・
なんでハンバーグの味がするの?
と思ったら、なんと疲れた私は七味のかわりにナツメグをうどんに
かけていたのでした。お笑いでしょ?
だけどもうそんなことさえどーでもよくて、黙って全部食べましたとさ。

フィンランドはやっと良い季節になったね。
自然ってやっぱりすごいよ!
太陽が照り始めたと思ったら一瞬で景色が変わるから。

投稿: soukichi | 2006年6月 8日 (木) 22:37

soukichiさん
バトン受けてくれて有難う。
私の狙いはズバリ!当たった。
soukichiさんはきっと素敵なバトンを
次の人に渡してくれると思っていた。
すごく嬉しい。

特にQ3の3つの言葉、すごいね~。いいね~。
2つ目なんて、ホント素晴らしい。
私の場合?【居る】じゃなくて、【居た】かもね。
でも1も3もズ~ンと来る言葉だ。

今日は何度もコメント入れたけれどメンテとかで
どうしても入らなかった。お礼が遅くなりました。


投稿: hanta | 2006年6月 8日 (木) 22:47

上の詩、soukichiさんが書いたと思って
ずっと読んでいた。
北村太郎さんとsoukichiさん、
表現が似てない?

投稿: hanta | 2006年6月 8日 (木) 22:50

hanta さま(いま可笑しかったよ。hanta というのが漢字に変換されて、繁多だってさ。当たってるかもね。)
いやいや、どういたまして。
私も凛さんと同じで良い気分でふんふんと読んでいたら、最後に自分の名前があって、ぎょえーと思ったのでした。私にはこういうの回って来ないと思ってたので。

2番目の言葉、良いでしょー?
ジョビンが作ってジョアンが歌った『オ・グランジ・アモール』の歌詞の中の言葉です。
逆の詞も誰かの歌の中にあって、ブラジル人ってこういうことを本気で信じてる国民性なのかなあと思ったリしてね。いいなあと思う。
ちなみに私の場合は『いた』ではなくて、これから出逢えると信じております。

ココログはずっとメンテナンス中だったので、何度もお手間かけました。それから気になっているんですけど、猫はみんな元気になったんでしょうか? 鼻炎も治ったの?

投稿: soukichi | 2006年6月 8日 (木) 23:25

hanta さま、
うん。似てると思う。
私は自分と似てるから彼が好きになったのか、それともずっと寄り添ってきたから似てしまったのか。どちらとも言えると思うけど。
それならいっそ私に降臨してくれないかと。
そしたら詩集の5冊くらいも残して死ねるのに。

投稿: soukichi | 2006年6月 8日 (木) 23:28

クローバー系とか雑草の根つまんだ所だけがちぎれてしぶとく地中に根を伸ばし何度でも再生してきます。引き抜くと一度に全ての根がそれこそ根こそぎにそんな時は気分がいいです。引き抜かれる時に自らさあ持って行きなさいと言わんばかりに切り離す残った根からは必ず再生と思うと根気比べです、根こそぎとっても又気が付くと其処かで顔を覗かせている雑草の逞しさ、植物は全て固有の種類で雑草という種類は無いのですね。人間に都合の悪い種類が雑草の汚名を着るのでしょう。

投稿: itio | 2006年6月 9日 (金) 01:17

昨日はココログがメンテだったね・・コメント書いて
送信する時になって初めてメンテ中だと判るのって
かなり凹むよね。最初にメンテって判ったら良いのに。
とsoukichiさんちで愚痴っても仕方ないんだけどね
(^^ゞ と言いながらエキサイトもメンテ中だったし・・
漢字は本当に「簡潔にして深遠」だよね。
漢字自体は好きなのに実は苦手だったりします。
soukichiさんは漢字が好きで得意そうだね。
この詩は絶対にsoukichiさんの詩だと思って疑いも
せずに読み進んでいました。
北村太郎さんの詩なのね・・とっても感性が似てるのね。
影響も受けたんだろうな・・

投稿: | 2006年6月 9日 (金) 05:58

詩は簡潔ですっと心に入るものがいいなあと思う
心の中を的確な少ない言葉で表せる詩はその時の感覚に合うとすっと入るのがいいなあ
そしてそんな詩をずっと心に留めておけるsoukichiさんもいいなあ
どうやっても詩を紡ぎ出せない私は素直に出てくる人が羨ましい

庭の草取りはやりだすと止まらないことがあるんです
ぼーっとなにかを考えながら、ときには無心で
花の手入れも子育てといっしょなのか、やらされていないから続けられるのかなあ

お忙しそうね、体には気を使っていると思うけど心配です


投稿: tama | 2006年6月 9日 (金) 08:07

そうだね。その内降臨してくれるよ。
私、詩集を楽しみにしているから。

2番目の言葉、どうもその辺で歳のギャップが
出てない?私はこれからなんてかったるいよ~って
思ってる。あはは。

さて、猫ですが、今は皆快調。シッポの鼻炎は
直りません。医者に相談したら、鼻に管を通して
洗うとか言ったので、断りました。
で、今はフラワー・レメディーというのを与えてます。
出来るだけ猫の負担が無くて、自然に治る物が良いと
思ったから。

投稿: 繁多(うそだろ!) | 2006年6月 9日 (金) 09:57

詩を読むと「色・香り・想い出」それぞれが一瞬にして頭に広がります。詩の行間が好きです。
バトンありがとうございます♪考えてみたいと思います。
soukichiさんの漢字に対するイメージ「簡潔にして深遠」
深く納得しました!!漢字って偉大ですね~。

投稿: クッピー | 2006年6月 9日 (金) 14:38

itio さま、
うん、ほんとにそうですね。
最も勝手で欲で生きているのが人間だと思います。
人と自然環境がより良く共生できる智恵と術を、そろそろ全ての人が学んで身につけないといけませんね。
言うほど簡単なことじゃないけど。
でも、やれるところから少しずつ・・・

投稿: soukichi | 2006年6月 9日 (金) 23:37

はい。凛さま、
何度もお手数かけてごめんね。
ココログのシステムはちょっと馬鹿なのよ。
私は漢字は得意どころか、パソコンのお陰で手紙を書くくらいでも今や辞書を横に置いてじゃないと、すっかり書けなくなくなりました。時々ごく簡単な漢字さえ出てこなくて、自分でも呆れてしまう。
でも漢詩を老後の愉しみに取っておこうと思ってるくらいだから、嫌いじゃないですね。きっと。

北村太郎に最も影響を受けたところがあるとしたら、それはブレス、文章の呼吸かな。間、ですね。とても大事にしています。
あと似てるとしたら感覚主義のところかな。
大きな違いは北村太郎は大変なインテリだけど、私はそうじゃないってこと。これはとても大きい。

投稿: soukichi | 2006年6月 9日 (金) 23:51

tama さん、
そうです。
ほんとに、そう。
tama さんも詩を読む方なんですね。
そんな風に言ってくださってありがとう。
詩の言葉を日常の言語として持っている人は、ストーリーを追うのでもない、理屈でも説明でもない、ただ感覚に身を浸すことを知っている人だと思います。
音楽を聴くのとも似てるけど、一緒じゃない。
意味が全部わからなくてもいいし、むしろ言葉の謎が少し残ってるくらいのほうが後々までひかれる。それを楽しむことを知ってる。
でも今日も疲れていてうまく書けないな。

tama さん、ご心配くださってどうもありがとう。
今日もなんだかボロボロです。
今夜はここまでにしよう。

投稿: soukichi | 2006年6月10日 (土) 00:07

hanta さま、
歳のギャップ? そうかなあ。
日本人は年齢を気にし過ぎると思うな。
結婚か非婚かはともかくとして、素敵な人には60になったって70になったって恋人がいてしかるべきだと思うよ。世間から見てどうの、ということは本人達には関係ない。
その『素敵』にしたって日本人はすぐに外見的なことだけを見てしまいがちだけど、そうじゃないしね。
現に北村太郎にだって最後までいたようです。
若いときは美青年だったけど、晩年はガンに侵されてルックス的にも良くなかったと思う。でもいた。
北村太郎の詩は理知的でありながらとっても色っぽく、私もそういうことがどうでもよくなってしまったら、もう書かなくてもいいかと思う。
そういったことはたぶん言葉にも出る。
文章にしても人を魅了しながら書くのじゃなければ意味が無い。

猫、治って良かったです。
あと少し!

投稿: soukichi | 2006年6月10日 (土) 22:34

クッピーさんて誰かしら?
IPアドレス見てもわからないし。
誰かがオフィスのPCからコメントしたのかな。
MOAPAさん?

いずれにしても詩を読む方で、好きな方なんですね。
バトン、受けてくださってありがとう。

投稿: soukichi | 2006年6月10日 (土) 22:39

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