こころ安らぐ時間
昨日は職場に着くなりショッキングなアクシデントに見舞われて、その対処に追われて心底疲れ果てた。自分でも衝撃的だったのは、起きたできごと以上に自分がそこまで職場の人間を信じられらくなっていたということだ。頭がまっしろになるくらいショックだった。すべて、とはいわないけれど、およそ人間が働く環境って害でしかない。誰になんといわれようと、心身に不調をきたす前にオサラバするしかない、と思った日。
そして今日、休日の朝、いつもより遅い時間に疲れたひどい顔で起きて窓をあけると、ふわっとあまい香り。
風はつよいけれど、よく晴れて外はすっかり明るくなっていて、コンスタンス・スプライがすっかりひらいていた。
わたしが生まれた年に作出されたイングリッシュローズの第1号。
いかにも「薔薇色」という言葉が似あう、あかるくて暖かな花色。ふくよかな大輪の花容に、豊かなミルラの香り。
デヴィッド・オースチン・ローゼスのカタログに載っていた、モッチスフォント修道院の写真にあったこのばらに魅せられて、わざわざ地方から取り寄せたのがわたしのイングリッシュローズとの出会いだった。つるばら仕立てのコンスタンス・スプライの生垣の前に置かれた、サンジェルマンが座ったら似合いそうなクラシカルな白いベンチの写真。いま見ても素敵な。ここちよいミルラの香りでいっぱいのあんなベンチに座ったら、誰でも一瞬でヘヴンにいってしまうだろう・・・・・・。
最初に手に入れたそのスタンダード仕立てのコンスタンス・スプライがだめになる直前に挿し木で温存したこのばらも、今年でもう何年になるだろう。ほんとに好きな気持ちって相手がなんであれかならず伝わるんだよ。毎年たった一輪咲くだけのこのばらに今年は4つもつぼみがつくなんて、それだけで今年はいつもとちがうってことじゃないか?
それからフェアビアンカ。
花屋が好んでウェディングブーケに使っていたばら。
こちらもイングリッシュローズでは白ばらの第1号。
あまりに純白すぎて、わたしのカメラではなかなかそのうつくしさをうまく捉えられないのだけれど、ミルラとフランキンセンスが混じったような独特ないい香りのする、とてもとても特別な白ばら。
ふるいばらをこよなく愛するわたし。
そして、言わずと知れたブルボンローズの名花、ラ・レーヌ・ビクトリア。
シェルに似たコロンとしたまるい花容に、あたたかなローズピンク。
陽を浴びて輝くいのち!
わたしが好きなばらに共通するのは、どれもすばらしく香りがいいこと。
こうして休日の午後のわずかな時間、ばらのいい匂いに包まれて植物たちの手入れをしていたら、『うつくしいばらの咲く庭のあるカフェで、おいしい珈琲をいれて来たひとたちに心安らぐひとときを提供するようなこと』が自分にもっともふさわしい仕事なんじゃないかというのが自然に降りてきた。制限ある現実のマインドであれこれ考えることなく、しばらくそのビジョンを卵のように温めていようと思う。
ばらは棘もうつくしい。
今日みたいに晴れてばらが咲く日が休日でよかった。
仕事だったらこんな景色も見られなかった。
そして今朝、ふわっとあまい香りがしたのは、ばらの香りにブルーベリーの花の匂いが混じっていたからでした。
スズランのような、ドウダンツツジのようなかわいい花。
野生のビルベリー。
その横でまだ咲いてる砂糖菓子みたいなマヌカティーツリー。
足もとで咲くラヴェンダー。
相変わらずわたしのベランダは所狭しと植物だらけです。
植物でいっぱいのこのベランダがあるからどうにか生きていけるわたしです。
いつだってほしいのは家より庭。
庭ありきのわたしたちの、巣。
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