わたしのバターナイフ*
ネット通販でハードメープルの木を手に入れて、近所の材木屋さんに頼んで電動ノコギリを使わせてもらって、暇さえあればせっせとバターナイフを削っていたことがあった。このあいだひさしぶりにアキオさんにばったり会ったら、その頃まだお嫁さんのお腹の中にいたお孫さんがなんと今年小学校入学だという。あれからもう、ゆうに6年がたったということだ。6年・・・・・・!
6年もたてばまわりの大人はあちこちガタがくるもんだけど、でもだからっていまさら過ぎた時間のことは考えない。時間なんて人間が便宜的につくりだした尺度にしかすぎなくて、もともと我々のいる世界には時間なんてないんだから。
メープルに限らず、あのとき作ったたくさんのバターナイフは喜んで使ってくれそうな大事なひとたちのところにいったけど、でも実はまだハードメープルが2本残ってて、そのうち1本はあとちょっとで完成のところまで仕上げて、ずっと机の引きだしに入ったままになっていた。それを今日、ひさしぶりにとりだして完成させることにした。
もう午後遅くのベランダに100均で買った折りたたみチェアを出して、アルミのバケツの上で自分の指の腹の皮膚感覚だけをたよりに削ってゆく。1日中コンピュータの前にいる仕事で致命的に肩と手を壊して、いっときはプールで泳ぐこともできなくなり、木工もお菓子作りもやめてしまったけれど、かつてこうやって晴れた暖かい日にベランダで黙々と木を削ることは、わたしにとって動態瞑想みたいなものだった。やっているあいだは日常の雑事からもストレスからも解放されて、木と指先だけに集中して何も考えずにリラックスできたから・・・・・・
今日は軽く余計なところを削って番手のちがう紙やすりでやすっただけだからあっという間に終わってしまったけれど、きれいなバターナイフができあがりました。
いろんな角度から眺めて、触って、バランスと仕上がりをたしかめます。
これでOK!となったら、最後に『ブッチャーブロックコンディショナー』を塗って磨いて仕上げました。
できあがり!
ハードメープルのバターナイフのいいところは固くて割れにくいところと、何年使っても木肌のなめらかさと色が変わらずきれいなままなこと。
実物は写真より流れるような木目がきれいです。あと自分でいうのはなんだけど、この形はほんとうに持ちやすくて使いやすい。
材料の木を手に入れることはできても、電動ノコギリがないと型を切り出すことができないから家で木工をやるのは難しいけど、機会があったらまたスプーンや、パン作りに使うカードやヘラなんかも作ってみたいもんです。
オイルが乾いたあと、きれいに包んでラフィアで結んだ。
これは日曜日に、うちの粉ものマスターが焼いてくれたパンと一緒にあの方にさしあげるつもり。
それにしても今日は春みたいに陽射しが暖かかったなあ。
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