2017年5月21日 (日)

5月のベランダ*

17i_forgot_this_name

美容師のJ君は一日の労働で疲れ果て、毎日たいてい夜9時には眠って朝1時に起きる。
「え、1時? なんで? 1時ってまだ朝じゃないよ。ミッドナイトだよ!」と、わたしがいったらJ君は「眠って5時間くらい経つと目が覚めちゃうじゃないですか」っていうんだけど、9時に寝て1時じゃ、実際にはまだ4時間しか経ってない。まあ、いいや。
J君は毎日夜9時には眠って朝1時には起きる。
それからひたすら本を読んだり、音楽を聴いたりしてすごす。
あたりが明るくなってきたら身体を鍛える時間。
ストレッチや筋トレをじっくりやって身体を絞る。
身体を動かして汗をかいたらシャワーを浴びて店の中と外の掃除をはじめる。
それが毎日の日課で、夜から早朝までのその時間が誰にも邪魔されない自分にとって最も自由な時間だという。
完全なショートスリーパー。
わたしもかつては一日数時間しか眠らずに家事と育児と仕事をやっていたけど、必要に迫られてしょうがなくやってただけのことで、何も好きでやってたわけじゃない。いつだって眠かったし、休みたかった。
J君の場合は体力があって、それが身体のリズムに合っているというんだからちょっとうらやましいくらいだ。
人は年をとるごとにセロトニンの分泌量が減ってだんだん眠れなくなるといわれるけれど、自分についていえばいまだそんなことはなくて、6時間から7時間は眠りたいみたい。
いつも土曜日にプールで泳いだ翌日は疲れて朝たいてい起きられないんだけれど、昨日12時半に眠ったら朝7時半に起きれた。やっぱり7時間。
わたしの一日のはじまりは歯磨きして水回りの掃除からはじまる。
でも5月の朝だけはそんなことも早々にベランダに出る。
今朝は狭いベランダで、頭を悩ましてまるでジグソーパズルみたいに鉢を動かしてたら、あっという間に時間が過ぎた。
ときどき鉢の配置を変えるのは、いつもは無理でもできるだけ平等にばらに太陽の光を当てたいから。それに鉢を移動していいのは、これまで見えなかった側が見えて、カイガラムシが付いてるのを発見できたり。
今朝は朝から陽射しが強くて、ばらの手入れをしてたら背中が熱くなって、ふだんあんまり汗をかかないわたしでも汗をかきました。
本日の予想最高気温、31度。
ついに30度越え!

初夏の朝。
賑やかな5月のベランダ。

17garden_in_may

| | コメント (1)

2017年5月20日 (土)

根頭癌腫病のヘリテージ

17heritage

もう何年めかな。
根頭癌腫病のヘリテージが花を咲かせるの。
いっときは、ほかのばらに移るから焼き捨てないとならないかな、というところまでいったのだけど、けっきょく捨てなかった。
ベランダの、東のいちばん端っこに隔離するように置いていて、そこは夏以外はそんなに日の当たるところじゃないから大きくはならないけど、それでも毎年、細い枝の先にいくつか花を咲かせてくれる。
それでわたしは、この花が咲くたびに、「あなたがわたしを捨てなかったから、今年もわたしは花を咲かせました」といわれているような気になるんだ。

このばらを切った後はかならずハサミを消毒しなくちゃならない。
いつもキッチンに置いてあるアルコールをかけて消毒する。
我が家で唯一の真っ赤なばら、ルイ14世は根頭癌腫病が移ってもうとっくに枯れてしまった。

それからクレア・オースティン。
いまにも枯れそうな細い株から出た細く長く伸びた枝の先に緑がかった白いつぼみがついて、そしてこの花が咲くと、いつもびっくりする。
まだ生きてたんだ、って。
去年の夏、枯れたんじゃなかったんだ、って。
すると、去年の夏に枯れたあのばらはなんなんだろう? って。
なんだかわからなくなります。

17claire_austin

クリームがかった白の、ぐるぐる巻き巻き、花びらがぎゅうぎゅう詰めのこのばらは香りもよくて、デヴィッド・オースチンがいうように最高の白ばらだと思います。
もう、最も好みのばら。
これだけでベランダを埋め尽くされてもいい。
ただし、強ければ、です。
デヴィッド・オースチンの白ばらはたいてい弱い。
鉢植えという環境を考えても弱い。
学習しなければならないのは人間のわたしのほうだ、ともいえるけれど・・・・・・

| | コメント (0)

2017年5月19日 (金)

ライラックローズ**

17lilac_rose_2

何年育てていてもちっとも大きくならないばら。
ライラックローズ。
すべてにおいてスローなこのばらは、冬の休眠期から覚めて芽を出すのも遅いし、つぼみをつけるのも遅いし、大輪だから、せっかくつぼみをつけてもつぼみが大きくなるまでに時間がかかり、そうこうしているうちにうどんこ病にやられてつぼみが開かなくなったりと、なかなか難しいばら。
そうやってやっと咲いた春のライラックローズの色は、モーブピンクとでもいいたいほどに重たくてアンニュイ。まるで冬の間に身内に溜めこんだ苦いもの、しんどかったものぜんぶ吐きだしてるみたいに。
このばらを見てると、花を咲かせるってことがばらの木にとってどれだけ大変なことかがわかるようだ。
そして、それはきっと人間もおなじだね。

でも、ひとたび春に花を咲かせたライラックローズは、秋にはもっとエアリーでかろやかな花を見せてくれる。まるで何かから解かれて自由になったみたいに。
そして、それがこのばらの本来の魅力なんだと思う。
だからわたしはライラックローズは秋のほうがずっと好きです。

昨日の夕暮れ時。
いつもこのばらを見ると、骨董通り沿いのマンションの窓に揺れていたモーブ色のカーテンと、その部屋の中にいたであろう女のことを思いだします。

17lilac_rose_02

| | コメント (0)

2017年5月18日 (木)

生きて愛するために

Tauji_kunio

昨夜は2ヶ月ぶりの上町63、清水翠×馬場孝喜。
相変わらず渋谷はうんざりするほどの人混みだった。
ただでさえ混みあってて導線が悪くて前に進まないのに、電車を降りるときや階段を上り下りするときくらいスマートフォン見るのをやめなさい、と思うけれど、みんな片時も目を離すことができないらしい。きっとがん箱まで持ってく気なのね。人の間を縫うように早足ですり抜け、ちょうど来ていた快速・横浜・中華街行きに乗りこむ。ここも殺人ラッシュ。渋谷から菊名までぎゅうぎゅう詰めの電車に揺られ、誰かに強く押されるたびに手に持ったケーキがつぶれるんじゃないかとはらはらした。いつも着くまでに疲れてしまう。帰りの東横線は始発に近いから乗ったときはガラガラだけど横浜で一気にたくさん乗ってきて、帰りは帰りでせっかくいい音楽を聴いていい気分になってても、終電間近の酔客の声の大きさとマナーの無さに辟易として疲れ果ててしまう。
そんなわけで無理じゃない限り、行きも帰りもたいてい本を読んでいる。
さいわい、この歳になっても深夜の電車の中で眼鏡なしで文庫本が読めるありがたさ。本さえ開いていればその世界に埋没していられるし、目の前の醜態に気をとられないですむ。今日は辻邦生の『生きて愛するために』を読んでいて、この本とてもいい本だから、上町に着いたら読み終わってなくても翠ちゃんにあげようと思っていたのだけれど、けっきょく渡せなかった。昨日はなんだか大賑わいで、せっかく行ったのになんにも話せなかったから。
でもいいや。人生はつづく。
いつも上町に行って帰ってくると駅に着くのは夜中の1時近くなのに、昨日はとっとと帰って来たおかげでいつもより早く帰り着き、酷いものにも遭遇しなくてすんだ。よかった。これからはずっとこれでいくかな。
昨日もライブではファースト、セカンド各10曲づつの全20曲。
心に残ったものはいくつもあるけど、『Your Song』を聴くといつも広島にいる、エルトン・ジョンが好きな親友のことを思いだしてしまう。彼がいまここにいて、この時間を一緒に共有できたらいいのになって思う。友達にぴったりな曲。
いつ聴いてもいいのは『エウ・ヴィンダ・バイーア』や『コラソン・バガボンド』や『Kiss of Life』だけど、いまいちばんキマってるのは個人的には『Mercy Street』だと思う。しっとり聴かせるスローバラードもいいけどそんなのばかりじゃ飽きるし、翠ちゃんはこういうスパイスの効いた鋭さのある曲を歌うとキレがあってかっこいい。馬場さんの巧みなプレイも1本のギターからとは思えない重層的なサウンドを作りだして、つづれ織りのような人間の感情の機微の深さに誘ってくれる。
そして、これ以降、しばし翠ちゃんはオーバーホールに入る。
本人に怒られること覚悟でうんとライトに明るく言うと、パーツの交換。
昔、アンティークカメラショップでアルバイトしてたころ、毎日のようにカメラを修理に出しに行っていて、ニコンサロンなんかでときどきオーバーホールから上がってきたカメラを目の前でテストするのを見たりしていたけど、最近は人間の病院もオーバーホールというのにふさわしいくらい無機質な感じになってきた気がする。筋骨系はとくに。
でもオーバーホールされた後の翠ちゃんはきっと身体のキレも声のキレも歌のキレも一段とよくなって、ますますいい歌が歌えるに違いない。なんたって、もともとアスリートみたいな人なのに、自由に身体を動かせないのはどれだけ辛かったことだろう。それが解消されるのは、筋骨系のみならず視界からも心からも重たい霧が晴れるようなことだろうと思うのです。
本のことに話を戻すと、わたしが昨日この本を渡したかったのは、まさしくいまこの五月の新緑のなかに生きていて、心を捉える一文があったからだ。辻邦生が若いころ病を得て発見した、生きる歓び。逆に言えば病を得なかったら到達できなかったであろう、人生の真理。
昔よく翠ちゃんに「そうちゃんは健康健康って、健康なのが好きなんだね」と嫌味っぽく言われたものだ。彼女がいわんとすることもよくわかる。でも、わたしの言ってることの本質が全然わかってないんだなあ、と思った。だいいち若いころ太宰にハマってたわたしが健康健康なわけないじゃん。でも現実に何をするにも身体が資本なのは誰でも一緒のことで、実際に病んだりしたら何もできない。だいいち女は美しくなくなる。デカダンで、心身病んでなおかつ美しい、なんて、生まれながらの人間離れした美貌の持ち主でもない限り、とうてい無理と思う。少なくともわたしは心身病んで若さも美しさも失った女の吐きだす病んだ音なんて聴きたくないね、と思った。そんなの気が滅入るだけだもの。
でも、いつのころからか水泳をはじめた彼女はとても健康的になった。何にでも熱中するタイプで、はじめたばかりのころは1日8時間もプールで泳いで肺炎になったりもしていたけれど、もともとわたしなんかよりずっと運動神経がいいうえに持ち前の集中力と身体に刻まれたリズム感でもって、わたしより後からはじめたのに、あっという間にうまくなった。そして精神的にもブレなくなって、いつでもニコニコしていられるようになった。そんないまだからこそこの本を渡してもわかってもらえると思ったのだけれど・・・・・・
でもいい。これから先も人生はつづく。生きて音楽を愛するために、詩とアートを愛するために、猫を愛するために、花を愛するために、いまここに生きるすべてを愛し、味わい尽くすために。人生はつづく。

昨日の上町。
大人の隠れ家みたいなJAZZバーで子供みたいに遊ぶイカリンさん。
うしろにいるのはセカンドの曲を選んでる翠&馬場さん。

17kanmachi63_01s_2

過ぎ去る時間のなかでこんなのもすべて Your Song の歌詞のよう。
How wonderful life is while you're in the world.

| | コメント (2)

しろばらしろばら *

17bolero01

今年わたしのところにやってきた、咲かせちゃいけない新苗のばらが咲いた。
ボレロ。
純白のうつくしいばら。ものすごくいい香り!
鮮烈で強いけれど、これぞばら、っていう、ばららしい香り。
咲いた後は株が消耗しないようにすぐに切って花瓶に活ける。
接いではじめて咲いた花がこの完成度ってことは、来年以降は大いに期待できるってことだ。もちろん、枯らさない限り。
そして小さくて不完全だけど、ボレロにくらべてもさらに繊細でやさしい感じのばら。
フェア・ビアンカ。

17fair_bianca

まんなかにグリーンアイ。爽やかな瞳。
ボレロの香りを嗅いだ後だと、このばらの香りが特殊なのがわかる。
人には美白効果があるという、濃厚なミルラの香り。
そしてグリーンアイというと、このばらもそう。

17green_ice

グリーンアイス。
極小輪ながら花のかたちはノアゼットローズを思わせる完璧なロゼット咲き。
このばらはうちに来てからなんだかずっと大きくならないでいたけど、今年になって俄然何かから解き放たれたように伸び伸びしてきた。やっぱりHB-101がよかったのかな。
このあいだの日曜、仕事仲間のマンションの前まで迎えに行ったとき玄関先にあったのもグリーンアイスで、ものすごく大きくて見事で、グリーンアイスってこんなに大きくなるんだってびっくりしたけど、テリハノイバラの血を継いでいるので大きく茂るんだそうです。
願わくはうちのグリーンアイスも大きくなってほしい。
うちのベランダが白ばらで埋め尽くされたらどんなにいいでしょう!
白と緑の組み合わせがいちばん好きです。

| | コメント (0)

«原種の蘭が咲いた!